救われた ページ29
side智樹
「あ、将！」
インタビューを終え、将達が待つ場所まで走った。
将「.....おかえり、エース」
「...なんだよ、それ。
つか、花下は？」
将の言葉と笑顔には、若干の嫌味が散りばめられている気がした。
ついさっきまで、将の傍にいたはずの花下の姿がない。
将「先にバスに行ってるって。」
「そっか。俺、ちょっと花下と話したいことある...」
将「...智樹！」
そう言って、将に背中を向けた瞬間呼び止められた。
「なに...？」
将「...お前がいなかった3日間、花下は弱音一つ吐かずに頑張ってた。」
胸の奥が、少し痛くなった気がした。
「...ん。」
将「俺たちを強くするために頑張りたいって、花下よく言ってたろ？」
言ってた。
マネージャーしたいって部室に乗り込んできた時から、ずっとそう言ってた。
「...うん。」
将「...花下、まだ智樹は東雲のこと好きだって勘違いしてると思うよ。」
...は？
将「いらんことペラペラ喋るからだからだろ。
...浮かれてんのか？ばーか。」
｢.....っ｣
一生、将には敵わない気がする。
将｢俺たちの大切なマネージャー、これ以上泣かせんなよな。｣
｢...将、｣
今にして思えば、将はいつも花下のことを気にかけていたように思う。
もしかして...
｢...もしかして、花下のこと...｣
将｢違うから。｣
俺の言葉を遮り、将は答えた。
将｢言うと思った。
...ただ、俺は花下に期待してたんだよ。
こいつなら智樹を救ってくれるんじゃないかって。｣
――！
将｢...智樹の頑張り方を否定するつもりはないけど、見てる方が苦しくなる時があった。｣
｢...、｣
将｢拠り所、なんて大袈裟なものじゃなくても...ふっと力を抜ける瞬間を作ってくれる子がいたらなって。あの事故以来...ずっと思ってた。｣
そんなこと、思ってくれてたのかよ...
知らなかった。
｢...うん、｣
将｢まぁ、救われたのは智樹だけじゃないけど。
本当に優秀なマネージャーだよ。｣
そう言って、いつもより少しだけ柔らかく笑う将。
｢...行って、くる。｣
俺の覚悟を感じ取ったのか、
将はもう一度笑って送り出してくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
