伝えたい ページ23
―――.....
今日のベンチは一塁側。
「.....っ、」
将「...花下、変な顔になってるぞ。
智樹と話せた？」
そこに、智樹先輩がいる。
それだけの事実で、私は気を抜いたら泣きそうだった。
「まだ、です。
多分、今は無理です...。」
泣きそうなのを堪えているせいで、
変な顔になってるんだろうな。
周りには聞こえないくらいの声で、将先輩に返事をする。
将「...まぁ、向こうは話したいことありそうだけどな。」
「...え？」
智「...花下」
将先輩を見上げていたせいで、
智樹先輩が目の前にくるまで気づかなかった。
―――.....
side智樹
試合開始までに、花下と話したい。
将と...何か話してるし。
今思えば、何かと仲がいいよな...あの二人。
二人に視線を向けていると、将と目が合う。
ニヤリと笑顔を返され、
お見通しなんだな、と思った。
花下に歩み寄り、名前を呼ぶと心底驚いた表情で俺を見る。
凪「...智樹先輩。」
「...こないだは、ごめんな。
せっかく、来てくれたのに追い返すみたいに、」
―――.....
なんで、智樹先輩が謝るんだろう...
「...いえっ、」
首を横に振るしか出来ない。
智「...雛に、会った。」
...！
少し離れた所にいる将先輩も驚いたのが分かった。
智「ちゃんと話せて...自分の中で色々ケリがついた。本当の意味で、前を向けるって思った。」
雛さんは、やっぱりすごいな。
智樹先輩を、救ってくれた。
「...よかった、です。」
智「...花下のおかげだから。
ありがとう。」
智樹先輩を見ると、今までで一番優しい笑顔を向けてくれていた。
「...私は、なにも」
まずい、泣きそうだ。
智「...約束、守るから。」
「...え？」
約束...？
智「俺たちが、花下を甲子園に連れていくから。」
そう言い残し、他の先輩達とグラウンドに走って行く智樹先輩。
「.....っ」
どうしよう。
こんなに泣き虫だったかな。
溢れ出す。
智樹先輩、この前言えなかった気持ち。
伝えてもいいですか？
この試合が終わったら。
大きくなり過ぎた、
好きの気持ち。
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作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
