誕生日 ページ20
―――.....
ついに、決勝戦当日になってしまった。
「...智樹先輩、来てくれますよね...」
着替えをすませ、リビングに向かう。
母「おはよう、ハッピーバースデー！」
16歳、おめでとう。
そう付け加えたお母さんの笑顔で、今日が自分の誕生日だということを思い出した。
「...忘れてた。」
正直、それどころではなかったから...。
余裕ないな、私...。
母「...ちょうど、一年前くらいだね。」
「...え？」
母「凪咲がここで、地区大会の決勝見ながら鈴華高校に行きます宣言したんだよ。」
「うん...、」
あの決勝戦を見ていなかったら、
智樹先輩のことを知らずにいたら...
きっと今の私はいない。
母「...行ってらっしゃい、テレビで見てるからね。」
この一年で、どれくらい私は成長出来たかな。
少なくとも、テレビの前でキラキラした智樹先輩を見つめているだけの中学生ではない。
支えたい、力になりたい。
大それたことは出来ないけど、
きっと智樹先輩は...
『辛い過去』も『忘れたい事故』も全部、
あれがあったから、今がある。
そんな風に言える人だと思うから。
過去を悔やむより、未来を信じる人。
「行ってきます...！」
私は、真っ直ぐ前を向いて決勝戦が行われる会場へ向かった。
―――.....
「おはようございます！」
グラウンドに着くと、先輩達がすでに集まっていた。
涼「おはよう、花下。」
将「もう俺たち着替え済ませてるから、花下荷物置いてきていいよ。」
将先輩に促され、更衣室に向かおうとした時、真護先輩がいないことに気付く。
「あれ？真護先輩は...」
将「あぁ...智樹の家に寄って来るって言ってたから」
「...智樹先輩、まだなんですね。」
涼「あ、真護来た！」
キャプテンの声に反応し、振り返ると真護先輩が一人でやって来る。
将「...智樹は？」
真「...おばさんが言うには、朝早く出たって...、」
智樹先輩...
？「凪咲！」
「未織！」
未織の隣には、那っちゃんと柊ちゃんがいる。
「来てくれたの？」
未「もちろんだよ！
あと、誕生日おめでとう！」
ありがとう、とお礼を言おうとすると、
近くにいた部員達が驚きの声を上げた。
真「花下、今日誕生日なの？！」
将「なんで言わねぇんだよ！」
え、誕生日って言うものなの...？
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作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
