再会 ページ16
side智樹
「.....っ」
雛「智樹？」
何も変わらない、自分を呼ぶ声に動揺を隠せない。
なんで、このタイミングで雛が...。
雛「...ふふ、少し話せる？」
「え、あ...あぁ大丈夫、」
動揺しっぱなしの俺に反して、雛は落ち着いて見える｡
雛「歩きながらでいいから...外出ようか。」
「...おぅ、」
外は相変わらずの暑さで、蝉の鳴き声が響く。
雛「...暑いね」
「...暑いな、」
雛は、何で俺に会いに来たんだろう...。
雛「...智樹は、変わらないね。
優しいまんま。」
「なんだよ、いきなり...」
道を歩いているだけなのに、突然そう言われ驚く。
雛「...自然に、車道側...私の左側に立ってくれたでしょ？」
そう言って、雛が懐かしい笑顔を向けてくる。
「...それ、は」
雛「...俺のせいだから、とかはなしだからね。」
言おうとしたことを制され、口篭る。
雛「顔に思ってることが出まくるところも変わらない。」
一瞬立ち止まった俺を、横目で見ながらもう一度笑う雛。
「...なんだよ、それ。
雛だって、十分顔に出るタイプだし、分かりやすいヤツだっただろ。」
徐々に、昔みたいに話せている自分に驚く。
雛「えー？
智樹には負けるよぉ？」
半歩前を歩く雛は、どことなく楽しそうだ。
雛「じゃあさ、智樹は私がずっと智樹のこと好きだったの気づいてたの？」
「...え.....っ」
挨拶でもするように、サラリと言ってのけた。
雛「...ごめんね、1年前あんな形でいなくなって。」
再会して、初めて雛の笑顔が曇った気がする。
「...なんで、お前が謝るんだよ。
悪いのは、俺だろ...？
雛の左眼から、光を奪ったのは俺...なんだから...っ」
悔やんでも、悔やんでも...悔やみきれない過去。
握りしめた手は、野球をするに相応しくない。
雛「...智樹、」
「あの後、雛に会いに行くことも出来なくて...
ほんとに最低だよな。」
怖かった。
光を映さなくなった雛の左眼を見るのが...、
雛「...あんなことになって、私自身が智樹から...野球部から逃げたの。
会ってしまったら、智樹を責めて傷つけてしまいそうで...怖かった。
そんな自分を守るために...智樹を更に傷つけた。」
ごめんね。
雛はそう言って、泣きそうな顔をする。
「...それでも...雛を傷つけたのは、俺以外の誰でもない。」
責められて、当たり前だったんだよ、俺は...。
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作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
