お願い ページ14
「私、鈴華高校の野球部マネージャーなんです。」
私がそう言うと、雛さんの顔が一瞬強ばる。
雛「そうなんだ！
あ、野球部に友だちいるんだよね！
藤川とか、二神とか...鈴村くん、元気？」
将先輩から、雛さんと智樹先輩は下の名前で呼び合ってたって聞いてる。
...この人の中でも、智樹先輩はまだ『特別』なんだな。
「実は、雛さんに会いに来たんです。」
雛「え...？私に？」
「はい。
少し、お時間もらえますか？」
初対面で、警戒心もあっただろうが
雛さんは承諾してくれた。
近くのベンチがある公園に移動する。
「あ！
私、花下凪咲といいます！
突然すいませんでした！」
勢いのままで、自己紹介もしていなかったことに気づきベンチから立ち上がり頭を下げた。
雛「ふふ、凪咲ちゃんね！
私は...あれ？名前知ってる、よね？」
「あ、先輩たちから聞いて...」
雛「そっか！
...それで？わざわざ会いに、ってことは何か話があるんでしょう？」
雛さんの方から、切り出される。
「あ...はい。
雛さんに、智樹先輩に会いに行ってほしいんです。」
雛「...っ！」
「突然のお願いで、驚かれたと思うんですけど...っ」
雛さんの顔に一気に戸惑いと緊張が走る。
雛「そう、だね。
驚いちゃった、かな。」
「私、雛さんと智樹先輩のこと...雛さんの左眼のことも知ってます...」
雛さんが目を伏せる。
雛「そう...。
でも、今更...智樹に合わせる顔なんて...」
「...っ
このままじゃ...！
智樹先輩が、野球を失っちゃう...！」
それだけは、嫌なの...！
雛「智樹が野球を...？
どういうこと...？」
「.....っ」
私は、雛さんに昨日起こった全てを話した。
雛「.....、」
「今回のことで、智樹先輩を苦しめてるのは私なんです。雛さんに頼むなんて、おかしなことだって分かってます...っ！
でも、私じゃ智樹先輩を救えない...から！」
雛さんは、黙って私の話を最後まで聞いてくれた。
雛「...凪咲ちゃん、考えさせてもらってもいいかな？突然のことだし、少し時間がほしいの。」
決勝戦前日の明日までには答えを出す。
そう、雛さんは約束してくれた。
雛さんと別れて、駅に向かう。
他に出来ることなんか、思いつかない。
雛さんに頼るしかない、なんて...悔しいけど...。
決勝戦まで、あと一日。
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作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
