進路 ページ2
｢あ...帰ってきた。｣
茹だるような真夏の日曜日､母親の声で目を覚ました。
｢おかえり､お母さん｣
母｢あ､凪咲｡ごめん､起こした??ただいま。｣
｢んーん､もう起きようと思ってたから。
お風呂溜める??｣
母｢お願いしていい?
助かる。あんた今日どこにも行かないの??｣
お母さんは看護師で､夜勤明けの朝は私がお風呂の準備をするのがルーティン。
うちには父親はいない。今時珍しくもない母子家庭。
｢特に予定はないよー。｣
リビングから聞こえるのお母さんの問いかけに答えながら､浴室に向かった。
｢...あ､忘れないうちに渡しとかなきゃ。｣
浴槽の泡をシャワーで流しながら､金曜日に学校でもらったプリントの存在を思い出した。
｢お母さーん､これ学校でもらったー。｣
自室に戻り､鞄から取り出したプリントをお母さんに手渡した。
母｢んー??なに??｣
それだけ言うと､お母さんはプリントを受け取り黙ってしばらく目を通す。
｢...日程､そこで大体決まりらしいけど大丈夫??｣
母｢まだ一月以上あるし､休みとるから大丈夫。｣
お母さんは､基本的には放任主義だ。
でも､昔から可能な限り学校行事には参加してくれたし､大切に思ってくれてるのは伝わってくる。
｢そっか､よかった。｣
母｢三者面談か...凪咲､高校決めたの?｣
｢...まだ｣
中学3年の7月。
この時期に志望校を決めていないなんて大問題だ。
でもやりたいことも､まして将来の夢もない私には
『 志望校』なんて...。
母｢そう...まぁ､面談まではまだ少しあるから。
でも､ずっと目を背けてていいことじゃないからね。考えて､悩んで決めなさい。｣
｢うん...分かった。｣
先の見えない未来へ続く､分かれ道に立たされているみたいで、私は正直焦っていた。
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作者名：美波 | 作成日時：2020年5月4日 14時
