足音に追われて ページ21
あー、やばいかも。どことなく淀んだ天気の中、車の空気には酔いそうで電車で帰ることを選択したのだが。そう感じたのは、駅を出ていつものように寄ったスーパーから出たところ。背後でパシャ、と音が聞こえた。今時無音カメラじゃないってことは、文春とかじゃない。
ここのスーパーには俳優さんや芸能人の人もよくいるから、俺じゃない、と信じたいところだけど、今ちょうど出てきたのは。
「……………」
マジか、と、いつもは曲がらない交差点を家とは反対の方へ曲がる。恐らく、家には帰れないから。どうするかを考えながら、記憶を、思考、フル回転させて巡らせる。
コツコツとヒールの音が近づいてくる。住所が晒されるならもう既にされているだろうから、マンションまではバレていないとしても。これでは仕方がない、ダッシュで逃げ切るか。雑誌に提供されるか、ネットに晒されるか、ともかくあの写真が出回る前に事務所にも言わないと。
「っ、はぁ、もしもし、」
「もしもしA？え、何、走ってんの？」
「、っ、裕翔いま、どこ？っ」
今日の収録に車で来ていた裕翔を思い出して。急用がない限り掛けないのも合ってか、すぐに出てくれた裕翔に追われていることを伝えれば、拾いに来てくれるという。
「っ多分、撒いた、はず」
「すぐいく、このまま繋げといて」
一番近くの店に入れてもらって、裏口で裕翔を待機。電話は繋げっぱなしでロケに着いていったであろうマネージャーにメールを入れた。この時期、コロナ渦で、しかもライブが控えているのに熱愛なんて報じられたら迷惑だ。社長にも直接連絡を入れさせてもらった。
「…………はぁ、最悪だ」
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作者名：ヒロイン症候群 | 作成日時：2021年1月31日 12時
