23話 ページ23
五条side
.
「楽しかったな」
「はい!俺たちの浴衣も買えてよかったです!」
「なんだか疲れました」
「そんなこと言うなよ七海!」
前列でわいわいやっている同期と後輩を見ながら、隣にいる存在に思考が引っ張られる。
なんとなく気まずい空気に、俺はどうすればと口をぱくぱくさせてしまう。
「…着物、買ってくれてありがとうございます」
Aもそんな雰囲気を察したのか、今日何度目かの言葉を伝えてくれる。
「いや、俺が買いたかっただけだし」
「それじゃあほんとに申し訳ないので、なんかお礼をさせてください!」
「そんなもんいらねーよ」
「私の気が済まないんです…!」
「じゃあ、今度の休み一緒に出かけね?」
「…2人で、ですか?」
「……うん」
「分かりました」
次の休みは意外と近く、1週間後の土曜日だった。
なんとかOKをもらえたことに大きく安堵のため息をはく。
結構いい感じじゃね?俺ら。
俺が浮ついている中、どこか冷静なAは、さらに会話を続けた。
「…どうして先輩は、そんなに良くしてくれるんですか?」
ずっと俯き気味に話していたAが、初めて俺の瞳を見る。
その眼はとても透き通っていて、俺の心の中までも見透かされてしまいそうだった。
そんなことを考えてしまった自分を誤魔化すように、目を逸らしてしまう。
「いや、良くしてるっつーか…」
好きな人に優しくするのは当然だろ。
その言葉が言えたら、どんなにいいか。
黙ってしまった俺をみて、Aは焦ったように付け加える。
「先輩を困らせようと思って言ったわけじゃないんです。
…ただ、私は禪院家の身分であるのに、」
…そういうことか。
Aの意図をようやく理解する。
それと同時に、まだ信頼されてないと言う事実を感じてしまって、
少し哀しく思う。
「要は、俺が五条家の人間なのに、禪院に優しくしていいのかって言いたいんだろ?」
「……」
沈黙は肯定。
図星だな、とAをみてからさらに続ける。
「そんなこと言ったらお互い様だ。Aだって俺に術式開示しただろ」
「それは、先輩の術式は私も知ってるし、不公平かなーって…!」
…そんな優しさ、いらねーよ。
Aはやっぱり、禪院の人間なんだと実感する。
そんなの当たり前なのに、どこか違うと思っていた。
勝手に期待して、勝手に裏切られただけなのに。
苛立ちを感じる自分にさらに腹が立った。
364人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
楽々(プロフ) - さとこさん» そうです!疾走感のあるエピソードを書くのは苦手ですが、精一杯頑張っています笑笑 これからも更新頑張ります、応援ありがとうございます! (11月5日 11時) (レス) id: c458930b6c (このIDを非表示/違反報告)
さとこ - もしかしたらなのですが、私がリクエストさせて頂いたお話を書いて下さっているのかも…と思いながら読ませて頂きました!五条先輩の少し焦ったような感情が感じることができ、続きがとても気になります!更新して頂き、ありがとうございます!m(_ _)m (10月21日 21時) (レス) id: 6be4d9c700 (このIDを非表示/違反報告)
楽々(プロフ) - ぷりんさん» ありがとうございます!!!励みになります😭 (9月23日 21時) (レス) id: c458930b6c (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん(プロフ) - すごく面白いです! (9月23日 16時) (レス) @page28 id: 46c210aa58 (このIDを非表示/違反報告)
楽々(プロフ) - aiueoさん» リクエストありがとうございます〜 かしこまりました〜!応援にも感謝します😉 (8月16日 10時) (レス) id: c458930b6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:楽々 | 作成日時:2023年8月11日 15時