陸 ページ8
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『うつくし姫』
六百年程前、今はもうどこにもその名前も残していない国に、とても綺麗な女の子がいました。
老若男女、貴賊を問わず、誰もが彼女に魅了されました。
その美しさだけで皇帝陛下から称号を贈られた彼女は、全国民から『うつくし姫』と呼ばれ、愛されていました。
「誰も私を見てくれない。」
「美しい美しいと誉めそやしてはくれるけれど、それ以上何も言ってくれない。私の中身を全く見てくれていない。」
「私は綺麗なだけの人形じゃあないわ。
外見だけじゃなく、もっと内面を見て欲しい。」
それが、『うつくし姫』の悩みなのでした。
己の美しさに甘えない
この立派な志に胸を打たれたのは、その国に古くから暮らす、魔女のお婆さんでした。
「うつくし姫。
お前の美貌を誰にも見えない透明色にしてあげようね。
その代わりお前の心が、周りの皆に見える様にしてあげようね。」
お婆さんはそんな魔法を、うつくし姫に掛けたのでした。
すると、うつくし姫のとても澄んで綺麗な心が周囲に見える様になり、
国民はうつくし姫の心までもの美しさに涙を流しました。
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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時