この巫戯けた素晴らしき世界は誰が為に在る？【文豪ストレイドッグス】 (ページ19)

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壱拾漆ページ19

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深夜二時。妃薫は何処か落ち着かない足取りで地下の資料室へと向かった。

ヒールの音が静かな廊下に良く響く。

資料室は学校の教室程の広さで、奥端にはパソコンが設置されていた。

その他のスペースは殆どが棚とダンボール等で埋め尽くされており、其の中に有る資料は何れもマフィアの真髄に関わる物ばかりである。

妃薫は棚を一通り眺めた後幾つかを手に取り、パソコンと向き合った。

部屋の外に人が居ないかを確認し、電源を入れた。

手持ちの資料を見ながらキーボードを叩き、幾行もの文字の羅列を打ち込んで行く。何かを恐れる様に何度も外を確認し乍ら。

そして拾数分程が経ち画面の大半が文字で埋め尽くされた頃──妃薫は手を止めた。

資料を覗き込み、そしてマフィアの情報検索サイトを立ち上げ、焦る様に文字を打つ。

『嘘だ...──』

出て来た文面は、次の様な内容で有った。

《伊邪那弥其ノ一族ニ於ケル報告書》

伊邪那弥──イザナミ

*中国に古くから存在して居た一族.

*現在より三〇〇年程前,“空白の三日”と呼ばれる出来事が
在り,其の殆どが死亡.

*生存して居た一人の一族の末裔が現在,中国温州にて
“空白の三日”の詳細を調査して居る

【伊邪那弥一族ノ異能力ニ於ケル調査】

・一族は全員が同じ異能力者で在る

・日本では“五大元素”と呼ばれる異能で在る

・限度等の詳細は明かされて居ないが、“水”の力により津波
を起こす等の自然災害を起こす事も可能だと考えられる

・現在生存して居るのは一人で在るが、要注意人物とする必要有り

パソコンを閉じる。

気付かれない様に資料室を出ると、妃薫は歯を食い縛り窓から外へ出た。建物の屋上や壁を跳ねる様にして、一心不乱にヨコハマの街を駆ける。

走り乍ら思考し、目を瞑る。其の表情は苦渋の決断を強いられている様な物で在った。そしてやがて脚の向きを変えた。

向かった先は、赤い煉瓦造りのビルチング( 、、、、、、、、、、、、)。

丁度其の入口付近に、あの外套が見えた。

『治( 、)！』

男──太宰は心底驚いた表情で妃薫を見た。そして其の表情と態度を見、何かを察した様に妃薫の手を引いて二階へと向かった。

国木田「太宰！貴様は又仕事を放り出しおって！！」

太宰「国木田君、済まないが後にして呉れ給え」

其のまま妃薫を連れ、奥の物置部屋へと入った。