検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:20,830 hit

壱拾弐 ページ14

.






妃薫は夜の街を見下ろしていた。


此処に来た時と同じ様に、陰鬱気な瞳で。





そして、何の前触れもなく、唐突に、落ちた。





そう、これは物語の始まりの合図。今までの話は、ほんの前座に過ぎない。







真っ逆さまに落ちていく。



風ではためく紅色のドレスは、ヨコハマの闇に良く映えていた。





此のまま...──。


妃薫は目を閉じ、心地良さげに微笑む。





途端( 、、)誰かに抱き止められた( 、、、、、、、、、、)



ふわりと、割れ物を扱うかのように。







『──え』

投身たァ( 、、、、)手前も思い切ったもんだな( 、、、、、、、、、、、、)






青い瞳が爛々と輝き、妃薫を捉える。瞬間、妃薫は心の内で苦笑した。嗚呼、逃げられないな、と。





「何処ぞの木偶に何か吹き込まれたか?」

『...それは治の事なんだろうけれど、生憎彼とは少し話していただけよ、中原さん』

中原「ンで彼奴は名前呼びなんだよ...」

『正直、苗字で呼ぶのは慣れて居ないのよ。暫く外国にいたものだから』






中原は鼻で笑って、妃薫を抱えたまま屋上へと戻った。




妃薫は中原を見、笑い出す。





中原「何が可笑しい」

『ふふ、ふはははははっ』

中原「おい」

『あはははははははっはははは』

中原「...絶対ェ何か馬鹿にしてんだろ」

『いや、ふふっ...もう少し身長があれば、惚れてたかも知れないのになぁと』

中原「潰すぞ手前」

『あっはははははははははは』





ビブラートの様に辺りに響く笑声を聞き、中原は溜め息をついた。




一頻り笑い終えると、妃薫は中原を見詰め、何故助けたのと問うた。




中原「...皆で考えてたんだよ。手前の過去も含め、これから如何するか」


『へぇ、それで?』


中原「戻って来い( 、、、、、)





妃薫は何も云わず、中原を見た。

壱拾参→←壱拾壱



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/  
作成日時:2018年3月12日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。