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一方Aがまだ覚醒していなかった頃、司とえむは一足先に現実世界へ戻っていた。そして、それと同時に司は着ぐるみに腕を捻りあげられていた。
「貴様ーー！ えむお嬢様を誘拐するとはどういうつもりだーー！！」
「は！？ 誘拐！？」
「証拠はこの着ぐるみに内蔵されたカメラに残っている！ まさかスマートフォンの光で目をくらませ逃走するとは……！」
「い、いや！ 決してそんなことは…！ というか、その着ぐるみ、カメラが入ってるのか！？」
コーラルピンクの着ぐるみは容赦なかった。司を強く押さえつける着ぐるみだったが、それをえむは静止した。
「ケンカしちゃだめだよ〜っ！ 司くんは一緒にショーをやってくれる大事なお友達だよ！ このステージを笑顔でい〜っぱいにしてくれるんだ♪
だから、仲良くしなきゃダメ！」
まさに鶴の一声である。司の言い訳を聞こうともしなかった着ぐるみは、彼女の言葉に停止して拘束を少し緩めた。
「貴様。本当にここでえむお嬢様と一緒にショーをやるのか？」
「い、いや、それはその…………」
ここで頷けば、このボロステージでショーをしなければならなくなる。言い淀む司だが、その度に着ぐるみが拘束を強めた。本気でこちらを殺すつもりの腕力に真っ青になる司。もう彼にはえむの提案を受け入れるしか、生き延びる術は無かった。
「えむお嬢様とショーをやるのか…聞いているのだが？」
「は、はい！ 僕はえむさんと一緒にショーをやります！」
「本当だな！？」
地獄まで響きそうなドスの効いた声に、司は可哀そうな程身体を震わせる。
「ひぃ……！ せ、誠心誠意がんばらせていただきます！！」
司の敗北が確定した。やったやったと喜ぶえむと、拘束から解放されて咳込む司。その場は一件落着に思えたが、その時えむは気付いたのだ。
＿＿彼女の愛する従者が見えない。
「あれ…Aちゃんは？」
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作成日時：2024年1月18日 22時
