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「Aちゃーん、苦しいよ〜」
「丁度いいみたいでなにより。さあ、このゴンドラから出る方法と鳳えむの居場所をさっさと吐くんだ」
一見、余裕そうなAだったが、内心は相当焦っていた。これみたいに頭がおかしい者どもにお嬢様が何かされているのかもしれない。泣いて私に助けを求めているのかもしれない。そう考えるとAは居ても立っても居られなかった。
＿＿もう少しお待ちください、お嬢様。Aはこいつから色々吐かせてからすぐに向かいますから。
針を取り出し、いざ尋問。
その時だった。背後に空気の揺れを感じ、反射的に振り返るとそこには衣装に身を包んだ青髪の青年が立っていた。まさかの増援である。
ああ、言っておくが観覧車は当然のように回転中で、ゴンドラも扉の閉まった密室のままだ。
＿＿どうやって侵入した？ ここはナイトメアかなにかか？
不可解な現象続きに疲れたAはひとつため息をついてしまった。目の前の二人は「あっKAITO〜」「大丈夫かい？ミク」と敵前にも関わらずのんびりと会話している。
再びタガーに手をかけたAに、青髪＿＿『KAITO』は静止の手をかざして「話し合いをしよう。鳳えむは既にこのセカイから出ていった。焦る必要はないよ」と言った。
__焦るなだと？ふざけるな
「では鳳えむは今どこにいる。私をどうやってここに連れてきた」
「その子は元の世界に戻っていった。ここはワンダーランドのセカイ。司くんの想いでできたセカイだ。ここに来るにはスマホに入っている『untitled』という曲を再生すれば来れる」
なら、帰る時はその曲を停止すればいいのだろうか。しかし困ったことに、Aは小さな通信機器は持っていてもスマホは持っていない。
「鳳えむには何も手出しをしていないから、安心してほしい。＿＿ミク、彼女を帰らせてあげられるかな」
「え？ で、でも〜まだAちゃんと何も仲良くできてないよ〜」
「うん、僕も是非そうしたいところけれど、今日は難しいと思うんだ。またいつか来てもらおう。ほら、彼女をえむちゃんのところへ行かせてあげて」
帰らせるやら仲良くなるやらよくわからないが、話がついたようだ。猫耳をしゅん…と下げ悲し気な顔をした『ミク』は申し訳なさそうな声色でこう告げた。
「Aちゃ〜ん、またね？ 遊びに来てね！」
拘束されていなかった彼女のふさふさのしっぽがAの腕に触れ、視界が一面光に包まれた。
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作成日時：2024年1月18日 22時
