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「おおう……今日はどうしたんだ、A」
いつも通りお嬢様をお家までお送りしてから帰る家路にて。どこかすねた表情のAに、兄は尋ねた。
「もっと友人を作れと。そう、言われました」
「えむお嬢様が……そうか」
兄は一瞬顔をしかめたが、すぐに元通りになった。何を思っていたのか表情で探ろうとするも、やめろと手で遮られてしまった。同業者である兄の心は読みにくい。興味もなくなって、Aは兄から目をそらした。
__お嬢様。
帰り道で告げられた言葉が脳内で何度も反復される。
『あたし、Aちゃんにはもっとお友達がいてもいいなって思うんだ』『いつもAちゃんはぎゅぎゅぎゅ〜って感じだから』『あたし? あたしのことは気にしなくていいよ!』『Aちゃんに、好きな人たちと自由に遊んでほしいの!』
確かに、私には友人と呼べる人は少なかった。いや表面上では付き合いがあっても、私からしてみれば仕事の延長線上でしかない場合も含めるなら範囲はかなり広くなる。
私はえむお嬢様の護衛官だ。将来に備えて人脈を作るのは必須。だが、そう簡単にこちら側の情報を流されちゃ困るので、本当に友人といえる人達は意図して減らしているのだ。お嬢様には心配をおかけしたくないために、友人はそれなりにいるように装っていたはず。そのはずがどうやら見透かされていたらしい。
だがAが気にしているのはそんなことではなかった。
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作成日時:2024年1月18日 22時