22 ページ22
えむお嬢様とさらりと会話を交わす彼には、物腰柔らかな雰囲気と優しさが滲み出ていて、彼が私が知っているruiさんだということに感覚的にも理解ができてしまった。本当にこの神代類が彼、らしい。
正直、慕っていた人の知りたくなかった裏側を知ってしまったような気分だが、新メンバー候補が信頼のおける知り合いでほっとしたのも事実。
目の前の人物が、昨日の笛吹き男だということでえむお嬢様は目をキラキラと輝かせ、憧れを露わにする。
「そうだ類くん！ あのピューンって飛ぶやつ、あたし達のショーにも使ってみたいな！」
「ああ。ドローンだね。もちろんいいよ」
「ほんとに！？ じゃあ、シャーシャーって飛ばせる？」
「流れ星みたいに飛ばしたいんだね。うん、秒速40キロメートルで起きるプラズマ化現象をドローンで表現するのはなかなかおもしろそうだねえ」
「あっ、でも、ファラファラ〜って飛ぶのも楽しいかも？」
「ああ、ルリタテハの飛び方だね。確かにあの蝶の不規則な飛び方は芸術的だよねえ」
すっかり打ち解けている。
えむお嬢様の擬音語をうまく解釈し、奇跡的に会話をつなげていく彼と、巧みな言語化をもって想像が確かになっていく様子にさらに目を輝かせるお嬢様。会話に入れなくともどちらの話も分かる私はともかく、何が何だかちんぷんかんぷん、といった様子の座長は呆れたような表情をしていた。
「……なんだかよくわからんが、こいつら話は通じている、のか……？」
「えぇ、まあ、そうじゃないですか」
……ruiさんらしく、研究に熱心なところも確認できた。その上お嬢様はすっかり懐いてしまって、上機嫌。護衛官としては完敗だが、ruiさんならいっか、とAも新メンバー追加に納得することになった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2024年1月18日 22時
