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「お疲れ様です、えむお嬢様」
「ありがと、Aちゃん。んっ___ぷはー！おいしー！ねえねえ、今日のショーどうだったかな？」
ショーが終わり、舞台裏に回ってきたえむお嬢様。
終盤はかなり勢いよく踊っていた筈だが、息の乱れひとつ見えない。お水を渡すと彼女はごくごくと飲み干してゆく。
「とても素晴らしかったです。天女かと思いました」
「もー、Aちゃんったら、今日のショーはマンボウさんだよ？」
「それぐらいお嬢様が美しいということです」
私の返答に嬉しくなったのか、お嬢様の笑顔はさらに光を宿し、私もそれにつられたように口角をあげる。…被り物をしているので、表面上では表情は変わっていないのだが。
「ところでえむお嬢様。今日は何かご用事があるのですか？」
「…へっ？」
効果音をつけるのであればぎくり、だろうか。分かりやすく固まったお嬢様を見て、私はやっぱり…と少しこぼす。
普段なら時間の許す限りたくさん公演を行ってお客さんを待つのだが、今日はその様子が見られず、さっさと切り上げてしまった。
隠し事か？護衛官であるこの私に！？どうして！
えむお嬢様に抗議をしようとしたが、言葉がでる前に後頭部をぽこりと叩かれた。
後ろを振り返ると、紙束を丸めて持つ兄が。…はいはい、お嬢様のお話をちゃんと聞けと。
「あのね、今日はこのステージに『てんまつかさ』くんが来る日なんだ！だからサプライズなお迎えをしようと思って！」
「誰ですかそいつ」
「えーと、『つかさ』くんは『未来のスター』で『すばらしいショーをお届け』してくれるんだって！ね、このステージにぴったりだよ！」
「何ですかそいつ」
兄から紙を投げ渡され、そこに書かれていた自己アピール欄を軽く読んでみるが、お嬢様が言っていたさほど内容と変わらない。何というか、全体的に大言壮語という感じで本当かどうか怪しい。嫌な予感しかしない。
「お前に伝えるのが遅れたのは、先方が採用を許してくれるかがはっきりしていなかったからだ。私が、お嬢様が本当にこいつとやりたいと思っておられるのか疑っていたこともある」
「『天馬司』……あえて素っ頓狂なことを書いて、お嬢様に近づこうなど考えたやつではありませんよね？まあ、何かあった時は私が身を挺してお嬢様をお守りいたしますが」
私がそう告げると兄は「当たり前だ」とでも言うように深く頷いた。
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作成日時：2024年1月18日 22時
