19 既視感の正体 ページ19
放課後、ワンダーステージ。
天馬司の隣には、かの『紫の笛吹き男』が立っていた。
「＿＿というわけで演出家を連れてきたぞ！」
「わあ〜！ 昨日のショーの人だ！ ようこそわんだほ〜い☆」
推定180ｃｍの大柄な男を連れてきて、『どうだ！』と言わんばかりに胸を張る天馬司。彼の話をかなり短く要約するとこうだ。
「人に聞いてみたら、たまたま同じ学校の、同じ学年の、隣クラスにいたので勧誘したと。それでもう一人メンバーも連れてきてもらったと」
「その通りだ！ なんという偶然！」
「君たちが、司くんの言っていた子達だね。神代類だよ。よろしく」
天馬司は相変わらずうるさい。動きもうるさい。だが真横にいる神代類は僅かに身体をこわばらせているものの気にしていなさそうだ。鼓膜が強いのかもしれない、今度試させてもらおう。
そうやって見つめていると、彼は自身を凝視するいぬ頭に気付いたのか、緊張を見せない柔和そうな顔で微笑んだ。その表情に、『どこかで見た』という思いが更に強くなる。
「(こいつは誰だ？)」
何か、引っかかるのだ。
同年代、演出家、ゲリラショー……
知ったばかりの彼の情報を一つ一つ並べて整理してゆく。
……あそこのステージの演出家の息子が同い年だったが、父親が『息子は演出に興味がないみたいだ』と嘆いていたはず。なら違う。あの演出家は黄色の瞳をしていたが、とっくに成人していて高校には通う年齢ではない。これも、あれも違うと記憶を遡り、彼に成りうる条件に人を当てはめて考えるが、中々出てこない。
それに、噂で聞いたなどではなく、もっと近くで私自身が彼を知っている気がするのだ。もっと、身近なところで＿＿。仕事関係の人脈から、プライベートな方にアングルを変えたその瞬間、一人の人間が頭に浮かんだ。
＿＿待てよ、名前は先程、『るい』と……
「っあ！」
Aの脳内に衝撃が走った。思わず息を呑む。昨日の既視感の正体が解けたのだ。俯いて思考していた頭を上げて、視界に彼をしっかりと映し、捉えた。思ってもいなかった人物との会合に心臓が跳ね、バクバクと脈だつ。
まさかとは思うが、
「あなたは_rui_0624さんでしょうか」
「＿＿え？」
.
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作成日時：2024年1月18日 22時
