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紫のドローンや一頭身の立方体ロボットなど見たことのない形、それでいてどこか玩具じみた見た目をしている小さなロボットたちが彼の周囲でコミカルに動き回り、度々観客の歓声を誘う。
次々に観客を楽しませる動きと演出を披露する彼は、不審者などではなく、まさにパフォーマーだと言っていいだろう。
「あれは……なんだ！？」
「すご〜い！ あの人の周りで、ちっちゃいロボットがいっぱい動いてる！」
まさかの都市伝説にあった驚きと、彼のパフォーマンスのレベルの高さに度肝を抜かれた天馬司とお嬢様はショーに夢中になっていった。
緩急がきいた口上、優雅で視線を引き付ける身のこなし、観客をロボットという無機物に感情移入させる巧みな演出。彼の話が進むごとに人々はさらに引き込まれていく。
彼はまさに演出家として引き入れるにぴったりだなのが＿＿
「コラーー！」
「ん？」
「……あぁ来ましたか。そろそろショーは終わりですね。」
正規のキャストではない。
彼は警備員に気付くや否や目にもとまらぬ速さでその場を片付け、観客に「この続きは、また次回にしようじゃないか」とお茶目に告げては颯爽と去っていった。
観客サイドから残念そうな声があがる。子供達には申し訳ないが、現時点では彼はまだ不審者だ。
「待てー！ ハァ、まったく……毎度逃げ足が速い」
「大変なお仕事をされているのですね。お疲れさまです」
「Aちゃんか。見たかい？ ほら、あの子が前に言っていた『紫の笛吹き男』だよ。彼も毎度飽きないものだねぇ、いつになったら来なくなるのやら」
手持ち無沙汰そうに持っていた警棒をくるくると回す警備員。いつもの愚痴モードに入る雰囲気を察してAはさっと手で制した。
横にはショーの余韻に浸っているお嬢様と、『紫の笛吹き男』が去っていった方角を見つめて思案する天馬司。やれやれ、雇用については後でたくさん書類を書くことになりそうだ、と私は呟く。
「ふふ、きっと大丈夫です。そう心配されなくても、近いうちに解決しそうですよ」
しかし、とそこでAは会話を止めた。
ずっと、胸の中に違和感があった。不思議だ。
初対面のはずなのに、彼をどこかで見たような気がするのだ。
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作成日時：2024年1月18日 22時
