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『ハーメルンの笛吹き男』
鼠が大量発生したハーメルンの町に、一人の笛吹き男が現れる。彼は、笛を吹いて鼠をおびき寄せ、川まで歩いて鼠たちを落とすという方法で、町民から受けた鼠駆除の仕事をやり遂げるも、町民が報酬を払わなかった。
それに怒った笛吹き男が、今度は町の子供たちを笛の音でおびき寄せ、どこかの洞窟へ連れ込んでしまう。
そして結局、町中の子供たちは行方不明になってしまったという話。
なのだが、お嬢様は知ってか知らずか私の肝を冷やすようなことを言う。
「へー! きっとすっごく楽しいショーなんだろうねっ! あたしも見てみたいなー♪」
「お、お嬢様……いや、でも私がそばにいるのであれば、いくらでも見て頂いて構いません。笛吹き男がなにか怪しい素振りを始めた途端に__」
「おい」
突然、先頭にいた天馬司が立ち止まった。歩みが止まった彼を不思議に思ったお嬢様は顔を上げると、何かに気付いたように「あっ!」と声を出した。
「__お前が言っていた『笛吹き男』は、背が高くて、黄色の瞳と、紫の髪をしているんだよな…?」
振り返ってこちらを見る天馬司は少し複雑そうな表情をしている。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのように。かくいう私も、こぼれた声には驚きの色を隠しきれていなかった。
目先の、ある広場。そこにいる人々は誰かを囲むように群れていた。
その中心にいたのは、
まさに噂通りの背丈と容姿の
「フフ、今日の彼らは特に上機嫌だ。何故って? もちろん、ここでショーができるからさ
さあ、機械仕掛けの名優たち、__ショータイムの始まりだ」
『紫の笛吹き男』だった。
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作成日時:2024年1月18日 22時