検索窓
今日:9 hit、昨日:21 hit、合計:4,757 hit

1 鳳えむと護衛官 ページ1

残暑。夏の季節も終わり、秋を迎えたころ。冬と言うには暑く、夏と言うにはまだ快適な空気の中、ほこり取り片手にワンダーステージを掃除していた。

 もう9月も終わるというのに、未だに太陽は煌々と地面を照らし続け、我々の体力を吸いとってゆく。
 いぬの被り物の中は信じられないほど蒸し暑く、息がしづらい。全身からだくだく湧いてくる汗が肌を湿らせる。一粒の露が背中をつうと流れた。くすぐったい。

「…あつい。兄さん、これ脱ぎたい」

 私がそう言うと、横にいたいぬの着ぐるみはその頭をこちらにぐりんと回転させ、睨みを効かせた。

「駄目だ。それを脱いだら顔が知られるだろう。我々はお嬢様の護衛。お嬢様に何かあった時のために、顔は臥せておく必要がある。
それと、言っておくがここは職場だ。私語はつつしめ」

 よく通るダンディーな声が無機質に答えた。

 やっぱり駄目だった。生真面目ないぬは自他共に厳しい。そう、頭だけ被っている私と違い、そのいぬ__もとい兄は全身が着ぐるみに覆われている。兄の方がずっと暑いだろうに、私が音をあげるのはなんだか情けない。

 それに、えむお嬢様のためと言われてしまえば、言いつけを破る理由も失くなってしまう。


__兄さん、私のことよくわかってるなぁ。

 そう思いながらも、脳裏に浮かぶのは一人の女の子だった。パパラチアのやわらかい髪とピンクスピネルの澄んだ瞳。浮かぶ笑顔はいつも、誰かのために輝いている。

 私は、そんな少女に心底溺れているのだ。


2→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
設定タグ:プロセカ , prsk
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作成日時:2024年1月18日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。