リンドウを捧げる【轟焦凍】 (ページ19)

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17．盗み聞きページ19

「…どっか出入口ないのか」

無駄に広すぎる建物
長い廊下を前に進んでみるが一向に出口を見つけることが出来ずに悩み出す頭。

早く戻らないと姉に心配をかけてしまうだろう。

早く早くと足が前へと気持ちを急かすように連動して速くなる。

すると歩くこと数分後、前方に人影が見える。

体操服を着ている所から雄英生で間違いないだろうと思考が呟く

あの人に出入口を聞いてみようと体をそっち側に向ける。

しかし、よくよく見ると、

「…あ、騎馬戦2位の人だ」

「…ぁ？」

そこに居たのは、選手宣誓をしたつんつん頭の男子生徒だった。

壁に寄りかかるように立っているつんつん頭くん。

私の小さな独り言にギロりと睨みをきかせる男子生徒にめんどくさくなりそうな雰囲気を察知し、脳が危険信号を鳴らす。

とりあえず、このままここに居ても埒が明かないということで出入口を探していることを伝えようと口を開いた次の瞬間、

「個性婚知ってるよな」

「実績と金だけはある男だ…」

「親父は母の親族を丸め込み母の個性を手に入れた」

聞き覚えのある彼の声が響き渡った。

反射的にその声の主からつんつん頭の人に並ぶように壁の影に隠れる。

低く冷たい言葉に心臓がどくりと嫌な音を発する。

「記憶の中の母はいつも泣いている…」

「お前の左側が醜いと母は俺に煮え湯を浴びせた」

淡々と言葉を吐き捨てる轟焦凍
言葉の意味を想像するだけで胸が痛くなる

左目元に存在するケロイドの正体に言葉を失う

彼の抱えている枷が想像以上に重いものなのだと突きつけられた。

「ざっと話したが俺がお前につっかかんのは見返す為だ」
「クソ親父の個性なんざなくたって…いや…」

「使わず1番になることで奴を完全否定する」

外からの日の光に照らされた轟焦凍と騎馬戦で4位のチームだった緑色の髪の毛をした少年の横顔

初めてお見合いの席で会った時、彼に父親に甘えてると軽々しく言ったことに対して謝罪したくなった。

悲しげな目と痛々しいケロイド

轟焦凍の背景に上手く言葉が出てこない。

本人の居ないところで盗み聞きをしてしまったことは悪いと思うけどそれでも轟焦凍に一言言ってやりたいという一心で足を動かした。