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「でも何か意外やったな。」
『え、何が?』
「ツムのことやからもっと怒鳴るかと思たんやけど、寧ろ何や静かでびっくりしたわ。」
『あー』
確かに、言われてみればそうや。
侑やったら絶対怒鳴る。酷かったら胸ぐら掴んでくるはずやのに。
さっきは何故か静かやった。
まぁ言い方は変わらんかったけど。
『……私やっぱ侑んとこ行くわ。』
「え?」
『治はおって、お母さんに言うといてくれへん?』
治は目を見開いて、俯く。
「俺も行ったらあかん?」
『正直おった方が気持ち的には楽になると思う。
せやけど何やろ…2人でちゃんと話さなあかん気がすんねん。』
「…そか、わかった。」
治は優しく微笑んで、私の頭をよしよしと撫でる。やから子供扱いせんとって。
.
侑side
ポケットに手を突っ込んで、ぶらぶらと歩く。
気がつけば大通りに出とって人がまぁまぁ多かった。
自分でも驚くほど、何故か冷静や。
「……?」
スマホが震えているのに気づいて、ポケットから出すとAからの着信電話。
せやけど、出る気がなく拒否のボタンを押して電源を切る。
ベンチを見つけて、腰を下ろした。
「……はぁ、」
A怒っとったなぁ。
そりゃそうか。本気でバレーやっとったのに、中途半端や言われたんやから。
オレが逆の立場やったら絶対キレとる。
中学の時、女バレは比較的弱小校やった。
Aだけが上手くても周りがポンコツなら意味あらへん。
正直、あいつが賞貰えたんは当たり前や思ってた。
やってAが上手いやん。
俺のサーブを拾える奴なんやから。
家帰ってから、疲れとるはずやのに庭でオーバーの練習ずっとしとったやん。
ある日寝る前にこっそりドアを開けたら、Aは黙々と勉強しとった。
あいつはめっちゃ努力家や。
中途半端なわけがあらへん。
「あー……。」
自分が不器用なことくらいわかってた。北さんと比べたら一目瞭然や。
北さんの正論パンチは慣れへんし怖いけど、間違ったことは言わへん。
対して俺は、感情的にあかん言葉まで言うてしまう。その対象がAや。
Aがバレー辞めて、何もかも全て捨てた時はすこし寂しかった。
いや、ほんまはめっちゃ悲しかったんやと思う。
「ほんまに……最悪や。」
「その顔やとほんまに気分悪そうやな。」
ちょっと勘弁してや。
何でおんねん。
「……北さん、」
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さっちゃん - めっちゃ面白かった!なんかもう、言葉にならない…。感動😭 (4月24日 20時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいも - めっちゃ面白かったです!感動して泣きかけました...!神作を有難うございました!! (4月20日 18時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
こめつぶ(プロフ) - めっちゃ神作でした…!!!親と兄弟が目の前にいるのに何度も涙出そうになって、めっちゃ堪えました。本当に素敵な作品、ありがとうございます!!!!多分これからもリピートさせていただくと思います!!(() (4月8日 16時) (レス) @page50 id: e94f7d2b88 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 神作ッ!!!主様天才すぎます。3周目に突入したのに涙が... (4月4日 0時) (レス) @page47 id: d24603059d (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 - なるほどなぁ、、神、 (4月3日 1時) (レス) @page50 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にろ | 作成日時:2020年5月17日 14時