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壱* ページ2

キーンコーンカーンコーン,,

放課後になることを告げるチャイムが鳴り響く。
その音に気付き、本を読む手を止める。

「…もう放課後。」

時間が経つのは早い。
本を読んでいると、いつの間にか下校時間ギリギリになっていることも少なくない。


私は本が好きだ。
本の中で生き生きとしている登場人物達を見るのが好きだ。

本を読んでいる間は、辛いことを忘れることが出来るから。




今日も下校時間ギリギリまで本を読もう。
広い別荘に独りぼっちでいるのは、寂しいから。



誰もいない教室で、ひとり、ひっそりと本を読むつもりだった。

けれど、今日は私以外に1人の生徒が残っていた。


隣の席の、柚木普くん。

話したことは無いけれど、大人しそうな、でもいつも怪我をしてくるような子。


もしかしたら彼も、私のように、虐待にあっているのかも。

なんて考えたこともあったが、すぐに考えるのをやめた。



私には関係の無いことだから。


茜色に染まる教室で二人きり。何も話すことなく時間が過ぎる。

そこにこのクラスの担任である黒髪の男性が顔を出した。



土籠「柚木、ちゃんと残ってたんだな。救急箱もって…神楽坂。お前はまた残ってるのか。」


「…まだ下校時間じゃないですよね?居てなにか問題でも?」

スっ、と先生に目を向けると、罰が悪そうな顔をする。

土籠「いや、そういう訳じゃ…」

…多分、先生は柚木くんに話があるのだろう。
だから私がいると都合が悪いのだ。

ならば大人しくたちのこう。

「…じゃ、私は帰りますね。さようなら先生。…柚木くん。」

普「え…あ…さよなら、神楽坂…さん」


その声を背に受けながら教室を出た。


その日は珍しく真っ直ぐ家に帰ったのだ。
明日はなんの本を読もう。なんて思いながら。


次の日の放課後にも人がいるとは思わずに。

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神埜(プロフ) - ふわさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年9月18日 23時) (レス) id: 18603f0b2d (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - 神作品の予感しかしないですわ (2019年9月15日 21時) (レス) id: 52abb0a881 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神埜 | 作成日時:2019年9月15日 18時

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