→ ページ7
私がエリアポリスになって1年程経った頃だろうか。
エリア内のパトロールをしていたところ、窃盗をしている男を見つけた。
私が逮捕しようとした時、彼はいきなり私の前にひざまずき、地面に頭をついた。
なんでも、友人に命令されてやってしまったとか。
彼の友人は、窃盗をしなければお前の家族を殺すと脅してきたらしい。
その証拠となる友人との電話音声も聞かされ、私は彼の事を信じた。
「確かにやってしまったことは犯罪だが、犯罪者となってしまっては奥さんと子供に会えなくなってしまう」
泣きながら言われたその一言が、私の心に突き刺さる。
家族を何よりも大事にしている、そして、その大切な家族に会えなくなってしまうのは生き地獄だ。
私は彼を黙って逃した。
もちろん、犯罪なんて二度としないと約束させてから。
その後は特に何事もなく、いつものように帰宅した。
だが、家の様子が明らかにおかしい。
いつもは「ただいま」と出迎えてくれる兄がいない。
それに、やけに静かだ。
不安が頭を支配する。
いてもたってもいられなくなり、私は靴もぬがずに家の中へ入った。
リビングのドアを勢いよく開けた時だった。
怪しい男が兄の上に覆いかぶさっている。
しかも、手に持っているのは_
「う、うわあああああああああ!!!!」
無我夢中で駆け出し、男に突進する。
よろけた男に馬乗りになり、何発も殴った。
_気がつけば男は冷たくなっていた。
しかも、今日逃した男だった。
だが、そんなことはどうでもいい。
兄に駆け寄る。
ナイフが胸につき刺さり、もう冷たくなっていった。
「兄さん‥兄さん!!」
思いっきり抱きしめる。
兄が、冷たくなっていく。
‥あいつさえいなければ。
そもそも、あそこで話なんか聞いていなければ。
あそこで逮捕していれば。
あそこで信じていなければ。
あいつさえいなければ、あいつさえいなければ、あいつさえいなければ!!!
激しい後悔と怒りで吐きそうになる。
視界が歪む。
ぼやけた視界の中、苦しんでいる兄さんの死に顔が目に入った。
ボロボロの心で決心した。
犯罪者に情けは無用だ。
犯人は、どんな手を使ってでも必ず捕まえる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこのおもち。 | 作成日時：2023年8月3日 0時
