続 冨岡先生は既婚者らしい

髪 ページ3

「義勇くんの髪ってなんというか、わさわさしてるよね」


リビングテーブルの前に座ってテレビを見てる義勇くんの髪の毛をソファに座って上からじっと見つめながら、思わず口に出してしまう。


義勇くんは何も言わずこっちをチラリと見て「？」と言いたげな顔を浮かべていた。


そんな彼の髪を指で絡めとる。跳ねっけの多いそれは、するすると指の間を通った、さらさらだ。


そうだ、いいこと思いついた。


1つに結んであるそれを解いて、洗面台から取ってきた自前の髪ゴムとクシを持って、髪を色々な形に勝手に結んでいく。



ポニーテール、ツインテール、ハーフアップ



「ぶくく、かわいい」



無言でそれを受け入れている義勇くんも中々にシュールである。


気づかれないようにゆっくりとスマホで写真を撮ろうとすると、気配がバレたのか急いで振り向かれる。


「写真を撮るな」
「ちぇっ、何も言わないからいいのかと思ったのになぁ」


ブーブー言っていると、義勇くんはツインテールにされ(更にはリボンまでつけられた髪)をまじまじと見つめ、どんよりとした顔をした。


「切った方がいいか？」
「ん〜〜〜〜…………確かに短髪の義勇くんも男前でいいと思う」


けど、と思わず口ごもった私を見過ごさなかった義勇くんは、すっかりこっちの話を聞く姿勢に入っていた。


「あ、あの、その、し、してる時に、髪が、顔にかかって、義勇くんの香りがするの…嫌いじゃなくってさ…へへ」


恥ずかしさのあまり顔に熱が集まってカッと暑くなり、手で仰ぐ。


義勇くんはと言うと、固まったように動かなくなった。


「ぎ、義勇くん……？」
「髪はしばらくこのままにする」
「そ、そっかぁ……」


ツインテールのままムフフなんて効果音が着きそうなその顔を見て、私もつられて少し笑った。


ご機嫌でなによりですよ、義勇くん

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