マリッジブルー ページ16
結婚を控えた女の人は、どうしようもなく不安な気持ちにかられるというらしい。
同棲していたアパートを抜け出し、2人で決めた新しいお城にはまだ荷物が少ない、ダンボールの壁だけが私の周りを囲っている、高く積み上げられたそこにすっぽりと収まるように体育座りをして、薬指に光る指輪を見つめた。
私は明日、名実共に水野から冨岡になる。
義勇くんのことを心から愛しているし、プロポーズされた時は子供のように泣きわめいた。
指輪をじっと、見つめる。
プロポーズされてからずっと身につけているそれは、まだ指に慣れていなくて、変な心地だ。
「おい」
ここに居たのか?と、上から義勇くんの声が聞こえて、顔を向ける。
「義勇くんだ、見つかっちゃった」
にへら、と笑ってみる、義勇くんはじっと私の顔を覗き込んだ。
「不安なのか?」
「えっ?」
「……結婚、不安なのか?」
見透かすように、彼の青い瞳が悲しげに揺らいだ、その言葉に私は目を伏せて答える。
「ちょっとね」
「俺じゃ頼りないか?」
「そんなことないよ」
「義勇くんが、幸せになれるか不安なの」
義勇くんは私には勿体ないくらい、素敵な人だ。
だからこそ、不安になる。
そう言って、また目を逸らすと、顔を手で挟まれ、無理やり向かせられる。
「俺は、幸せだ」
「ひゃ、ひゃい?」
「俺は、お前じゃないと幸せになれない」
「だから、お前が幸せになることだけを考えろ」
馬鹿だな、そんなこと言ってさ。
「……しかたないからさ、義勇くんのお嫁さんになってあげるよ」
「あぁ、ありがたいな」
「だから、義勇くんも私の旦那さんになって?」
「……仕方ないな」
手を広げて目を見つめれば、彼の暖かい胸の中に包まれる。
これから、幸せになる予感を胸に、私は目を閉じて彼の背中に手を回した。
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つめきわに - とっても面白かったです!この夢主ちゃんと義勇先生大好きです!これからも色んな作品頑張ってください! (2021年3月25日 18時) (レス) id: 25cb83da3e (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - とても素敵なお話で、読んでいてとても幸せな気分になりました! (2020年4月29日 22時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
名無しの刃 - あ〜冨岡夫妻に子供出来ねぇかなぁ〜(作者チラッ)そしたら最高なんだよな〜(作者チラッ)※執筆頑張ってください!応援してます! (2019年10月17日 0時) (レス) id: 7c2b7aa7df (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - リクエストの、、、蔦子お姉さんのお話、、、最高でした!!!!ほんとにありがとうございます!!!!! (2019年10月7日 17時) (レス) id: 5636a23256 (このIDを非表示/違反報告)
あまざけ(プロフ) - 雨水無月さん» 解釈の一致(;_;)とんでもない褒め言葉です!ありがとうございます(;_;)私の方こそ幸せって言って貰えてめちゃくちゃ幸せです…!ありがとうございます(;;) (2019年10月5日 0時) (レス) id: d945b5bbc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまざけ | 作成日時:2019年10月3日 17時