冨岡先生は既婚者らしい

4.1>悪いオトナたちの話 ページ9

昔の話をしよう。
と、言っても何億年も前じゃない、夫婦が出会った頃の話だ。


以前どこかで私と義勇くんは職場恋愛という話をした気がする。しかし、なにも私が初登校の日にパンを加えて角でぶつかって、その相手が義勇くんだったなんてロマンチックな出会いではなかった。


「初めまして、今日からお世話になる歴史担当の水野Aと申します！」
「うむ！俺は煉獄杏寿郎と言う！同じ歴史担当なので分からないことがあればなんでも聞いてくれ！」
「ありがとうございます！」


凄く松岡修……に近しいものを感じる先生だな。
髪の色がド派手だったので少し身構えていたが、なんてことない普通にめちゃくちゃ優しい先生で、内心ホッと胸を撫で下ろす。


その他の先生方にも軽く挨拶をして回る。みんな優しくて不安だった気持ちがやんわりとほぐれていっていた時だ。


「冨岡義勇だ」
「あっ、はい……初めまして」


冨岡義勇、とだけ言って直ぐに目も合わせず書類に顔を戻した男。


えっ、嘘、私なんかした？冷たくない？えっ？


「あの、冨岡せ、先生？」
「なんだ？」
「水野と申します、これからよろしくお願いします」


やっと名前を名乗るとぼんやりと私の顔を見て、またすぐに書類に顔を戻してしまう。


ひぇ〜〜〜社会ってやつは怖いな！と初めて感じた出来事だ。


そんな彼と後に結婚するなんて、誰が思うだろう。

4.2>悪いオトナたちの話→←3>ピアス

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す