39. irregular ─ side 九井 ページ39
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その日オレは、アラームじゃなくて、何かを焼く音で目が覚めた、かもしれない。
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──────ジューーッ、チンッ、ザクザク。
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絵本でも読んでるのか、と思うぐらいにそんな簡単にも表せてしまうような、そんな音がオレの鼓膜を刺激した。
生活感のないこの部屋に充満していたのは、酒の匂いでも鉄の匂いでも、香水の匂いでもなく
確かにそれは、極々平凡で当たり前のような朝飯の匂いがオレの部屋にしていた。
生活間なんてなくて、ましてやそんな手料理みたいなことは無い。大体どこかしらで食べてくるか、テキトーに摘む程度のそんな質素な生活に
彩りが添えられるみたいに。
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重たい体を起こしては、たまにズキッとする頭の痛みは二日酔いに違いない。少し気分が悪い中でも、昨日のそれが夢ではない、と思いたくて
思いたかったんだ
あなたが生きていて、オレと暮らしているのかもしれないなんて
そんな
幻想を、夢を、希望を、願いを。
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「あ、起きた」
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似ているような声であっても、あなたはそこには居なかった。居たのはめんどくさい様な契約関係を結んだ
あなたに似た彼女がそこに居る。
鼻腔を刺激したそれは、質素なはずで、きっと高級料理を食べ慣れてしまったオレの舌を満足させることなんて出来やしないような、そんな料理だろう。
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──────── 誰のための、料理だ?
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九井「なんで、いんだよ」
「別に。酔っ払った三葉くんに見えて、つい」
九井「帰れ」
「2人分作っちゃったんで嫌です」
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そう言われながら、コトンッと机に置かれたのは2人分の料理だった。
食材なんてなかったろ。だって自炊をするのを辞めたのは、イヌピーと別れてからだったはず。
それから自炊というか、人の手料理を食べた記憶はない。三途も首領も料理が出来る人間ではなかったし。金ならあったから外食か、どら焼きとかたい焼きだったはずだ。
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九井「いらねぇ」
「私だからの認識の前に、人としてのことを考えたらどうですか」
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イレギュラーだった。オレの世界の中で
彼女の存在は
イレギュラーだったんだ。
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ちょき。(プロフ) - 十六夜夏希さん» まだ2人とも囚われてるような感じになってます!! 少しずつですが、物語が動き始めつつありますので、見守って貰えたらです! コメントありがとうございました! (2021年12月5日 9時) (レス) id: 186429bef0 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - え、めちゃくちゃ切ない…。それぞれの囚われている感がめっちゃ好きです。ココの推しもっと増えろ。(笑)更新頑張ってください! (2021年12月1日 2時) (レス) @page38 id: 1ab5df6e8d (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - ココオタクって言われてしまったうち喜んでいいのやら😩 (2021年11月30日 0時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ちょき。(プロフ) - ちえさん» 九井くんいいですよね!!わかります!!私も好きです! 今回は九井くんメインのお話でしかも長めのお話なので、楽しんで貰えたらです! コメントありがとうございました! (2021年11月28日 23時) (レス) id: 186429bef0 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - ココが推しなのでこういう話しがもっと見たいです。 (2021年11月26日 19時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょき。 | 作成日時:2021年11月22日 13時