Euphoria【Raul】 (ページ10)

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Grateful days 10 ページ10

スマホは耳に当てたまま、そーっとスコープを覗いてみる。

あれっ、胸元しか見えない。本当だ、おっきいな・・・

『なんか、困ってるっぽいんだよなぁ。知り合い？』

「顔が見えないんだよね。開けても大丈夫かな」

『わっかんねー。あ、オレまだエレベーターホールんとこにいるから』

そこでこっそり様子を伺ってんのね。

音が鳴らないようにドアのチェーンをかけた。

鍵を開けてゆっくりドアノブを回す。

「わぁっ！」

急に扉が開いたのにびっくりしたのか、大きい声が降ってきた。

「あーーー、やっぱりAさんちだ！！よかったーーー」

「ラウール、くん・・・？」

超音波みたいな甲高い声で悲鳴を上げたのは、この世で唯一の肉親となった、弟くんだった。

『えっ？なに？知り合いなの？』

耳元で辰哉がぎゃーぎゃーわめくから、いったんドアを閉めてチェーンを外し、大きく扉を開いた。

「あの・・・Aさん！」

「はい？」

「だーーー！おまえ！知り合いなのか？！」

ラウールくんが一歩前に踏み出したところで、蚊帳の外が我慢できなくなったのか、辰哉が飛び出してくる。

「A、こいつ、誰？」

辰哉の不躾な声に、ラウールくんの方こそ『オマエ誰だよ』みたいな顔で見下ろしている。