Euphoria【Raul】 (ページ46)

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Grateful days 46 ページ46

それもそうか。いや、そういうことじゃない。

「Aさんの匂いっていうか・・・んー、なんだろ、やっぱ匂いかな。すんごい落ち着く」

耳元に唇を寄せて、囁かないで。

脈を測ったらとんでもない数値が出そうだ。バクバクと暴れる心臓を必死で押さえつける。

しばらくはラウールにされるがままの人形みたいに固まってたけど、どのくらい経ったのかようやく離れた。

子どもみたいな高い体温の余韻が皮膚に残る。

ざあっと風が吹き抜けるみたいな。

知ってる。これは寂寥だ。

「おれ、もう寝るね。Aさんもちゃんと寝てね」

身体から離れていき、最後にラウールの右手の人差し指が名残惜しそうにわたしの腕から遠ざかる。

「ラウール、おやすみなさい」

「おやすみなさい、Aさん。いい夢見てね」

頭ぽんぽんまでされてしまった。

にこりと唇の両端を上げたラウールは、そろりとリビングルームを出ていく。

廊下に出たところで、立ち尽くしたわたしを振り返り、バイバイ、と小さく手を振った。

いい夢なのか。

それとも、これは悪い夢？

＊