Grateful days 45 ページ45
長いまつ毛がそうっと持ち上がると、黒曜石のような瞳が姿を現した。
「眠れなかったの?」
ふわふわと髪を撫でながら問いかけると、にこりと唇をたわめたラウール。
「ううん。寝てた」
「こんなところで寝たら身体が痛いでしょうに」
「うそ。Aさんを待ってた」
そのことばに、びくりとごまかしようもなく動揺する。
とっさに、彼の髪から離れた手。ラウールがゆっくりと起き上がった。
じっと間近で顔を覗き込まれ、否応なく脈が速くなっていく。
どうもこうもなくて、慌てて立ち上がった。
「ち、ちゃんとベッドで寝ないと・・・」
「Aさん」
ラウールは低く囁くと、その腰を上げた。
「ハグ、していい?」
頷く間も首を振る間もなく、覆いかぶさってくる。
あわわわ・・・
きゅ、と長い腕をまとう。その大きな身体にすっぽりと包まれてしまう。
ハグ、とはなんて便利でずるいことばなんだろう。
全身がラウールの温もりにくるまれて、ものすごくドキドキしているのに、心の底から安心感が湧き上がってくる。
硬直してると、頭のてっぺんに頬擦りされた。スンスンて、もしかして匂い嗅いでる・・・?
「匂い嗅ぐのやめて・・・」
「ごめんね。でもシャンプーいい匂いだよ。おれも同じ匂いだし」
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作者名:ゆき乃 | 作成日時:2022年9月24日 19時