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Grateful days 29 ページ29
気づいたときには複雑なリズムの曲が鳴り響いていて、ラウールが一心不乱に踊っていた。
何か、苦悶するような。手の届かないものを希っているような。
手を差し伸べたまま、舞台袖へと走り去ってその姿が見えなくなっても、呆然とただ彼の消えた先を見つめていた。
パチ、パチ・・・
我に返ったような遠慮がちな拍手が聴こえた、と思ったら、会場が割れんばかりの拍手の波。耳が痛くなるくらい、誰もが手を打って、彼を讃えている。わたしも、思いっきり拍手を鳴らした。
そんな中、パッと舞台が明るくなった。薄く透ける布がところどころ上から吊り下がっている。
派手な音がジャーン！と響くと、ピンクの髪をしたダンサーがおよそ人間とは思えない跳躍力で飛び出してきた。
彼に続いて、細身で長身の男性や、金髪だけど顔は日本人ぽい男の人、その後ろには衣装を統一したダンサーたちがわーっと出てきてみんなで踊り出す。
テーマに沿って進むステージは、途中でリボンにぶら下がるサーカスみたいなパフォーマンスもあったり、ラウールもその長身を存分に使ってダンスを披露し、会場の熱気は冷めやらぬまま、あっという間に１時間を超える公演は幕を降ろした。
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作者名：ゆき乃
| 作成日時：2022年9月24日 19時
