Euphoria【Raul】 (ページ28)

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Grateful days 28 ページ28

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ラウールがよく『レッスンに行っている』と言っているダンスカンパニーの公演は、いくつか都市を周るらしい。

ダンスステージなんて見たことない。すごいなぁ。

差し入れはクッキーでよかったのかな。何人分用意したらいいのかよくわからなくて、とりあえず一番たくさん入ってる箱を携えて会場へ行く。

もぎりを通ると花束を受け付けているカウンターがあったので、ラウールの名前を伝えて手土産を預けた。

すりばち状の会場は、開演時間が近いからか、ほとんどの席が埋まっていた。

ラウールからもらったチケットは、ど真ん中から少し前よりの席。こんな良い席でいいのかな・・・

暗くなるとざわめきがぶわっと盛り上がり、そして静けさに沈む。

暗闇の中から、のっそりと舞台中央で立ち上がった人がいる。

ラウールだ。

ひゅっと自分が息を飲む音がやけに大きく聞こえた。

ピンスポットが、彼を包む。真っ白な衣装に、鮮血のような真っ赤な靴が目に焼き付いた。

ふと、右手が持ち上げられた。音はない。

ないのに、ポーンと、何か合図みたいな音がラウールから発せられているような錯覚に陥る。

光量が強く、長いまつ毛が頬に影を落としているのまで、はっきりと見える。光りすぎていて、この世のひとではないような雰囲気。精霊とか、天使とか、そういうの。

瞳孔が開いているのか、ラウールの指先ひとつの動きまで、網膜に焼き付くようだ。

ダンスって、音に合わせて踊るものだと思っていた。

でも、ラウールがその体をくねらせると、音が生まれてくるような気がした。