Euphoria【Raul】 (ページ5)

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Grateful days 5 ページ5

「ラウールです。お兄ちゃんもいるんだけど、お兄ちゃんはママの子じゃないんです。そっか、ぼくたち、きょうだいなんだ・・・」

ホッと息をついて、泣き笑いみたいな表情のラウールくん。半分だけ血を分けた、きょうだい。

お母さんは昔の話ができるほどの体力は残っていないみたいだった。お見舞いにもってきたゼリーをラウールくんに渡した。

「わたしの連絡先を入れてあります。もし、何かあったら・・・連絡をください」

ぎゅ、とラウールくんが眉をしかめた。でも、それは遠くない未来だろうと思う。

長居をする理由もない。そのままきびすを返して部屋を出た。

ラウールくんから電話があったのは、それから１週間後。テレビでは、梅雨入りが宣言された日だった。

キリスト教のお葬式って初めてだな・・・

教会には多くの人が訪れていた。お母さんて、結構人望あったんだ。

わたしが２歳にもならない頃、仕事でアメリカへの赴任を要請されて、お父さんとは大げんかの末、離婚して出ていったと聞いている。

ときどき誕生日のプレゼントやエアメールのハガキが届いたりしたけど、いつしかそれもなくなっていた。

お父さんが亡くなったときに、まだ２０歳そこそこのわたしひとりではどうしたらいいか全然わからなくて。お父さんの携帯電話から連絡をした。

１８年ぶりに会った母親は写真の面影があるような気もするけど、感慨にふけることはなかった。

やることはいっぱいあったし、できるひとなんだろう、葬儀の手配をテキパキと進める彼女は、仕事をこなしているみたいに見えたから。