溶けるほど、甘く【Ryota.M.】

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次の日は有給を取っていたから、新しく買った家具や家電を受け取っては配置して。段ボールがあると狭くてたまらないから、頑張って荷解きを完了する頃には、窓の外がオレンジ色に染まっていた。

「・・・お腹空いた」

昼は日用品の買い物ついでに買っておいたパンを食べたけど、さすがに夜はちゃんと食べたい。

冷蔵庫も入ったから卵とか牛乳とかも買ってこよう。

エコバッグに財布とスマホを放り込んで、商店街へと繰り出した。

小売の八百屋さんや魚屋さんは今まで住んできたところにはなかったから、物珍しくて見て歩くだけでもとっても楽しい！

商店街から逸れたところにあるスーパーで卵や乳製品を買って、大根やにんじんは八百屋さん。こういう使い分けができるっていいなぁ。

「あれ？岩本さん？」

なんだか懐かしくも感じるような声。少し弾んで聴こえたようなそれに、鼓動が速くなるのを感じながら振り返った。

「店長さん！こんにちは」

目の前の彼は両手にパンパンの買い物袋を下げている。買い出しの帰りなのかもしれない。

「こんにちは。どうしたの？もう引っ越し終わった？」

「そうなんです！今日は冷蔵庫が入ったから食材を買おうと思っ・・・」

ぐぅぅううう〜

ぴしり、と空気が凍りついた。

私のお腹よ。もう少し我慢してくれてもいいんじゃないかい？

恥ずかしさに思わずお腹を押さえて、そーっと、頭上を見上げてみる。

きょとんと目を見開いていた店長さんは、パチパチまばたきをすると、くつくつと楽しそうに笑い出した。

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