恐怖欠落者

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エース誕生ページ2

小さな孤島で、女の悲痛が響いていた。

「うっ
　ぁああ！！」

予定よりも何か月も遅れた出産

Aは珍しく、口角を下げルージュの手を握っていた。

「うぅうう！！」

探りを入れてきた海兵を１人残らず殺し。

信用できる医者１人と廊下でウロウロ歩き回っている男１人。
この二階建てのこじんまりした小屋にいる人間。

「頭が見えてきましたよ」
汗を手で拭いながら、声を掛ける助産師の女

「うぅうう！」

数時間にも及ぶ出産は、出血も多く、ルージュの命を蝕みながら誕生した。

「ハァハァ
　この子の名前はエース
　元気な男の子」
力なく子供を触り、皆が声を掛ける間もなくルージュは息絶えた。

Aはそれを見届け、ルージュの顔にかかった髪を耳にかけ立ち上がる。
その口は徐々に弧を描いた。

ルージュの頬に手を置くと、ルージュの体のみが消えていった。

バタンッと勢いよく開く扉。

「おぎゃぁああ！おぎゃぁあ！」
子供の泣き声だけが響いていた。

「…」
子供と血まみれのベットを見て口を閉じるガープ
全てを悟ったようだった。

『…ルージュの体は僕の船に
　そしてエースは今ガープ
　貴方の手に』
助産師の手からエースを抱き上げ、ガープの腕にゆっくりとおろす。

『これを』
ガープの腕に赤黒い玉の着いたネックレスをかける。

『時が来たらこの子に』
次にガープの手に自分のビブルカードを置いた。

『最後に目撃者の完全な消滅を』
そう言った瞬間、助産師の後ろに瞬間的に移動し、腕を武装して心臓を貫いた。

女は目を見開き、悲鳴を上げる間もなく絶命。

ガープは目の前で起きているあまりの無情な光景に息を呑んだ。

血なまぐさい部屋を換気するように、木製の窓を勢いよく開ける。

首だけ動かし振り返り

『ガープ
　任せるよ』

目は見えないが、何かに射抜かれたような恐怖が襲った。
ゾッと背に悪寒が走る。

「分かった」
ガープは掠れた声で絞り出すように言った。

Aはそれを聞き満足そうに歯を見せ笑い、空間に溶けるように消えていった。

これが彼の遺志を継ぐ者の誕生で。

必ず忘れてはいけない僕の大切な日。