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「あの、どうしました?」
今日は普通に穏やかな天候で過ごしやすい日だった。いつも通りオフィスへ行こうとしていたら、何かを探している人を見つけた。
何だか放っておけなくて声をかけてしまった。決してナンパとかそんな下心はない。断じて。
だって下を向いていて女性かどうかなんて近づいて話しかけてみないと分からなかったし。
だけど、
『動くな!』
「えっ?」
まさかこんなことを言われてしまうとは思わなかった。
叫ばれて思わず言う通りにしてしまった。
全く動かずに何かを探している女性の様子を暫く見ていると、「あった!」と言いしゃがんだ。
『やっと見つけた!…あ、すみません!もう動いて大丈夫です!!』
「あ、そう…」
なんとか動いていい許可を出してくれたようで、ゆっくりと彼女に近づいた。
『すみません急に叫んじゃって。コンタクトを落としちゃって、踏まれないようにって思ったらつい…』
「ああ良いよ全然。むしろ俺の方こそごめんね急に」
彼女は落としたコンタクトを持ちながら辺りをキョロキョロとし始めた。今度はどうしたのだろうか。
『あの、ここら辺に自販機ってありませんか?』
「自販機?…はないかな。ショッピングモールまで行かないと。」
『あぁ、そうですか…うーん、どうしよう』
「どうしたの?」
『水が欲しくて。流石に汚れてるからこのままじゃ付けれなくて』
「確かに」
水か。あ、そういえば俺、喉が渇いて駅で水を買っていた気がする。
「あったあった。ほら、俺のペットボトル使いな?」
『え!それは悪いですよ!』
「良いから。じゃあショッピングモールまで歩くの?」
『う、それは…』
「ほら、有難く貰っときな」
『ありがとうございます…』
渋々ペットボトルを受け取ってくれる彼女。控えめに水を手に付けて、あっという間にコンタクトを付けていた。いや、早い。
『あー、世界が戻った…あ、水ありがとうございました!これ、幾らでした?』
「え?いや、いいよ別に」
『でも、せっかくのお兄さんの水を使っちゃったんで…』
「ほんのちょっとじゃん。誤差だよ」
まだ納得のいっていない顔をしている彼女になんとか財布をしまわせる俺。そこまで俺だって金に五月蠅くないし。
すると急に俺の顔を覗き込んできた彼女。
『あ!お兄さん、この前のnice guyじゃないですか!?』
「え!?」
『あ、gentlemanの方が良かったですか?』
「うん、そうじゃない」
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時