最後でなくても kwmr ページ38
『あーあ。彼氏ぐらい欲しかったな』
オフィスからの帰り道。少し暗くなった空に浮かぶ星を見ながらポツリと一人で呟いてみるが、無論返事が返ってくることはない。
「どうして？」
『えっ』
…と思っていたのに後ろから声がして勢いよく振り返った。
『河村さん。どうしてここに、』
「Aさん間違えてるよ」
『あれ…』
河村さんの手には私が伊沢さんから受け取ったはずのUSBが。急いでカバンからUSBを取り出す。私が持っていたUSBには見覚えのないシールが付いていた。
「そのシール付いてるの、俺の」
『ご、ごめんなさい！』
なんということを私はしていたのだろうか。頭を下げて謝ると河村さんは笑いながら全然いいよ、と言ってくれた。
『ちゃんと自分のってわかるようにストラップでも付けときますね…』
「はは、まぁそれが一番いいよね」
二度とこんなことしません、と心の中で誓ってなんなら今からこの足でストラップを買いに行こうとも決めた。
「…で、さっきは何で彼氏欲しかったとか言ってたの？」
『げ…』
なぜ話を戻すのだろうか、河村さんという人は。彼の顔はニヤニヤと笑っていた。ドSすぎるだろ河村さん。はぁ、と1つ諦めのため息をついた。
『…今日で地球が滅亡するらしいんですよ。だから、彼氏ぐらい欲しかったなーって呟いてみただけです』
「へえ」
うわ、絶対に信じてない返しだ。だから言いたくなかったんだよなあ。でも言わないと帰してくれなさそうだったし。
『はい、もういいですよね。じゃあ帰ります』
この空気に耐えられなかった私はもう帰ろうと思い河村さんに一礼をしてから背を向けて歩き出した。
『…あの、なんで付いてきてるんですか？』
なぜか河村さんまで一緒に歩いていた。本当になぜ。もしかしてまだ弄り足りないのか。私のメンタルはかなりズタボロなのだが。
「僕も帰ろうと思って。しかも方向コッチだし」
『あぁ…そうなんですか』
もうこの際嘘でも本当でもなんでもいいやと思い一緒に河村さんと歩いた。
「ねぇ、普通人生最後って家族と過ごしたいもんじゃないの？」
『まだその話します？』
僕は美味しいもの食べたいなーと呑気に言っている河村さん。そこは家族と過ごすんじゃないんですね。
『思い残すことなく死ぬことなんて出来ないじゃないですか？だったら、せめてやりたいことを1つや2つぐらいしてから死にたいじゃないですか』
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜！これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです！ (2020年2月22日 16時) (
レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます！楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃるちゃる | 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月20日 17時
