#3 ページ28
「俺のせいで牡丹さんが酷い目にあうかもしれないって思うと、責任しか感じなくて」
「そんなことないよ」
「そうだよ、ナナさん普通に仕事が忙しいだけじゃん」
こんな薄っぺらいことしか言えない自分に嫌気がさした。悲しそうに笑って俺を見つめる渡辺さんは、何も知らない俺たちにここまで心配されたことを先輩として失格だなと思っているんだろうな。
「ごめん、情けないね」
そんな弱々しく言うぐらいなら俺たちにも教えてくれたらいいのに。それはどうしても出来ないんだろう。……いや、この人の頭の中にはその選択肢すら浮かんでいないのかもしれない。結局渡辺さんは一段と飲みすぎてしまったようでやがてすぐに眠ってしまった。
上手く本音を聞き出せた感はなかったが、とりあえずナナさんに報告しなきゃと思い、何があったのか分からないけれど自分を責めているらしいということを伝えた。
〈2人はそのまま好青年の良き後輩として無事に家に送り届けてやってくれ〉
直接的なことは言われず、しかも今のこの状況だけ言及されて終わり。まぁまた何かあったら言えばいいだけの話か。消化不良感が否めないけれどこれ以上長居するわけにもいかないからと会計を済ませてタクシーを呼ぼうとした時、足音が聞こえた。
「え、ナナさん!何で?」
「山上少年が来いってうるさくて」
「だってこうちゃんさんの介抱しんどいですもん」
「全く酷い後輩だねー」
とか言いつつ満腹で食べきれず残っていたおつまみをナナさんはしれっと食べた。相変わらずマイペースだ。
「彼と出会えたおかげで今こうやって二人とも仲良くできてるんだからさ、責任を感じることなんてないのにね」
「そうですよね」
「まぁきっと、これからも暫く嘆くかもしれないけどその都度励ましてやってよ、時々スルーしてもいいからさ」
突っ伏して爆睡している渡辺さんの頭を優しく撫でながら俺たちにお願いする表情がなんとも柔らかくて。きっと彼女も彼女で思うことがあるんだろう。
「私は感謝しかしていない、ってことを伝えてやってほしいな」
それじゃあ送ってくから後は二人で飲み直したりしな。と言って消えていった。伝えてやってほしいなんて、いつでも直接言えるはずなのに何でだろう。きっと暫くは聞かされることがないのであろう俺たちは首を傾げながらチェイサーを飲んだ。
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通りすがり - 何度もコメントすみません。やっぱりこの小説好きです!いくらでも待つので、続きを期待してもいいですか? (3月15日 16時) (レス) @page34 id: c971cc1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 作品の世界観が素敵で一話目からノンストップで読み続けてしまいました。続きがとても気になります。また、更新されることを願っております。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page34 id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます、、、!かなり更新ペースが遅いのですが、佳境に入ってまいりましたのでぜひ温かく読んでくださると嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 05ff2dafb9 (このIDを非表示/違反報告)
トマト(プロフ) - コメント失礼します!作品の雰囲気がめちゃくちゃに好きでずっと読んでいられました!もっと早くに出会いたかったです……一読者として応援しています (2022年6月14日 19時) (レス) @page33 id: 44a1cdd5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 通りすがりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!返信遅くなってしまってすみません!相変わらずマイペースすぎる更新ですが何卒よろしくお願いしますー!!! (2022年3月1日 1時) (レス) @page28 id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年11月18日 15時