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勢いよくドアが開いて僕を含め皆が一斉に見た。
「はぁ…はぁ…っ、」
入ってきたのは我らの社長。それにしてもそんな慌ててどうしたんだろうか。片耳だけイヤホンをしていたけれど気になった僕はイヤホンを外して伊沢さんの方を見た。
「あー!伊沢さん!ちゃんと連絡しなくちゃダメでしょー?…ってあれ?」
「伊沢、どうした?」
こうちゃんが野次を飛ばしながら伊沢さんを見た瞬間固まった。冷や汗をかきながら息を切らして、いかにもパニック状態に陥っている伊沢さんを見るのは誰もが初めてだった。
「何があった?」
「俺のせいで…百合根さんが……っ!」
その一言で衝撃が走った。とりあえず落ち着こう、水でも飲もう、と皆も不安で仕方がないはずなのになるべく冷静に伊沢さんのことをフォローした。
「マホさんなら大丈夫だよ、すぐに戻ってくるって言ってくれたんでしょ?」
「…そうだよ」
「待ってれば帰ってくる」
自分が油断したせいだと深く落ち込む伊沢さんをみんなで励ましながら彼女を待ち続けた。
どれくらい経ったのだろうか。体感としてはかなりな時間待ち続けていたのだが、伊沢さんが帰ってくる数分前に散歩がてら夕食を買ってくると出ていった福良さんがこのタイミングで帰ってきた。明らかに一人じゃなく、誰かと会話しながら。
「ただいまー。あれ皆どうしたの?」
「っ、」
一人事情を知らない福良さんが首を傾げる。その後ろには、ニコニコと笑ったマホさんが普通に立っていた。
「ただいま諸君〜」
「なんで、」
「さっき下で会ったんだよね」
「いえーす」
どれだけ皆が心配したと思ってるんだ。怒りと安心で疲れてしまって何も言えなくなって僕は溜息だけがこぼれた。
そして何も知らない福良さんに事情を説明すれば案の定笑顔が怖くなるわけで。
「よく平然とした顔で俺と一緒に歩いてきたね?」
「いやー、ハハ…」
「心配するに決まってるじゃん!!!もう!」
いち早く声を荒らげたのはこうちゃんだった。誰よりも付き合いが長いこともあり今にも泣き出しそう。理由はそれだけではないように思われるが。
「悪かったって。ちゃんと懲らしめといたから」
そう言って微笑んだマホさんが嘘を言っているようには聞こえなかった。なぜなら無傷で帰ってきたことがそれを証明していたから。
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通りすがり - 何度もコメントすみません。やっぱりこの小説好きです!いくらでも待つので、続きを期待してもいいですか? (3月15日 16時) (レス) @page34 id: c971cc1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 作品の世界観が素敵で一話目からノンストップで読み続けてしまいました。続きがとても気になります。また、更新されることを願っております。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page34 id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます、、、!かなり更新ペースが遅いのですが、佳境に入ってまいりましたのでぜひ温かく読んでくださると嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 05ff2dafb9 (このIDを非表示/違反報告)
トマト(プロフ) - コメント失礼します!作品の雰囲気がめちゃくちゃに好きでずっと読んでいられました!もっと早くに出会いたかったです……一読者として応援しています (2022年6月14日 19時) (レス) @page33 id: 44a1cdd5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 通りすがりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!返信遅くなってしまってすみません!相変わらずマイペースすぎる更新ですが何卒よろしくお願いしますー!!! (2022年3月1日 1時) (レス) @page28 id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年11月18日 15時