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よりにもよって河村さんにだけは見られたくなかった。
なぜならレポートに必要な本とは似ても似つかないジャンルの本を借りていた。河村さんにとっては知っているもなにも──先週、彼が書評として紹介した1冊だったから。
これは完全に油断していた結果だ。だって今日は来ない日だと思っていたし、もし来たとしたって関わりのない編集部がいる部屋には顔を出さないと思っていたし。
絶対バレた。もう最悪だ。今から苦し紛れの言い訳を全然働いていない頭で考えるしかない。
黙って思考を巡らしていると先に口を開いたのは河村さんだった。
「どこまで読んだの?」
「ま、まだ半分…ぐらいです」
「ふーん」
あえて主語を使わずに聞いてきたが、すぐにわかってしまった私も私だ。
本当はしっかり読み終えているし、
レポートだって既に書き終えている。なんならさっき提出した。
でも返しそびれたなんて恥ずかしくて言えない。ただでさえ不気味な笑みを浮かべているんだもの。
「な、なんですか…?」
沈黙が耐えきれなくて小さく声を出す。それでも変わらず口角を上げたまま私を見ている。
今気づいたのだけど、河村さんが紹介していたからって理由で買うんじゃなくて図書館で借りたなんて、私ケチすぎでは?
いやぁ…だって…ねぇ?ついでで借りちゃっただけだから…うん……。
私の手は止まり、河村さんも何も言わずにこっちを見てくる。
止まっているのは私たちだけで周りは平然と動いていく。時間だって過ぎていく。
「別に?偶然でも嬉しいなって思っただけだよ」
「…」
二度、瞬きをすると動き出した目の前。ゆっくりと手に持っていた本を置きながら呟いた。私は何も言えずに一連の流れを目で追っただけ。
もうその言い方からトゲがあってお手上げだ。偶然じゃないことを分かっていながら言うんだ、この人は。
その時、終わりを告げるように福良さんが「河村〜」と名前を呼んで、目線が動いた。
私はこれで解放される。安心した気持ちで編集作業に戻れる。まだ緊張が解けなくてドキドキしているけれど。
「明日持ってきてあげる。見返りは…うん、感想文1枚でいいよ」
「へ、…」
去り際に言われた一言に開いた口が塞がらない。そんな私の反応を見て満足そうに微笑みながら、じゃあね、と居なくなった。
「あ、明日…?」
と、突然過ぎない?カレンダーを見ると明日は水曜日だった。
毛布、切れたの本当は-izw→←散りばめられた伏線-kwmr
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豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» いえいえ、気にしないでください^ ^その時はコさん推しだったんだと思います。今また箱推しに戻っていまして…笑 コさんとは出身が同じなんですよ!それ見て嬉しくなってるんです!これからも頑張ってください! (2021年5月17日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - お返事遅くなってすみません!涙 マシュマロもありがとうございます!コさん推しなんですね!一緒で嬉しいです!!笑 これからもよろしくお願いします! (2021年5月16日 17時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» これからも見ますよ!ちなみに、28日についったの方で匿名で送らせて頂きました!でもついったログインできないので見れないのですが…。ちゃるちゃるさんに届けば!と思い、送らせて頂きました! (2021年4月30日 22時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - ありがとうございます!素敵なお言葉で励みになります、、、マイペース更新ですがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2021年4月29日 0時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - コメント失礼します。ちゃるちゃるさんの作品を一気読みさせていただきました!この作品シリーズ、めちゃくちゃ好きです!更新待ってます! (2021年4月28日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月8日 17時