雨とかさ-fkr ページ8
今日は雨が降ると朝のニュースで言っていた。だから傘を持って行きなね、と声をかけて しっかりと手に持って出たのを見送ったはずなのに。
「ただいまー」
「おかえりーって、A 傘はどうしたの」
夜、帰ってきた彼女を玄関まで迎えに行くと朝持って行ったはずの傘が見当たらず髪や服が少し濡れていた。
「さっき傘もささずにお母さんのことを待ってる女の子がいて、」
「だから渡してきたって？」
コクリと素直に頷くAに思わずため息がこぼれた。優しい心は良い事だけどさ。
「でもさ、傘をもう一本買って渡してあげるとかも出来たじゃん」
「いやーそうなんだけどさ、1回やってみたかったの。“私すぐそこだから！”って走って去るのを」
なんて脳天気なんだ。ドラマの見すぎだよ。絶対そう言うやつって家が近くにないやつじゃん。それで風邪を引いたらかっこ悪いの極みだし。
「はいはい。分かったから風邪引かないうちに早くお風呂入ってきな」
「はーい！」
元気に返事をして脱衣所に向かう彼女をただ見ていた。やがてシャワーの音が聞こえてきて俺はリビングに戻りながら数年前の出来事を思い出した。
───それは俺の初恋の話。高校生の頃、あの日も雨が降っていた。
ド平日の夕方、明らかに中学生ぐらいの女の子が私服のまま雨宿りをしている子を見かけた。
髪の毛も洋服もビショビショで辺りをキョロキョロしていてここら辺の人ではないんだなとすぐに察した俺は、どういうわけかその子の元に駆け寄った。
「あの。多分今日の雨はなかなか止まないと思います」
いきなり話しかけてしまったのにも関わらずその子はふわりと笑って「そうなんですか？参ったなー」と能天気に濡れた髪を触った。多分これは一目惚れだったと思う。
「傘、使ってください」
こんなことをする柄じゃないから絶対カッコ悪くなってたと思う。目を丸くして驚く彼女に俺は畳み掛けて言った。
「家すぐそこなんで。それじゃ」
彼女の言葉なんて聞かずに雨の中を駆け抜けた。走り去る直前にありがとうございますという声は聞こえた気がする。いや、そういうことにしておこう。
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緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ！ (2020年12月30日 22時) (
レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね！知らなかったです。教えて下さりありがとうございます！ (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します！みかんの白い筋は､アルベドって言うんですよ！ラテン語で“白さ”という意味です！このコメントはスルーしていただいても構いません｡お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃるちゃる | 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月9日 17時
