心も未来も霞む-fkr ページ46
「危ないから前見て歩いてよ」
「へいへーい」
ぶっきらぼうに言われた言葉に軽く返事をして覚束無い足取りで空を見上げる。今の時間は1時21分。外を歩いているのは私と拳くんだけ。
「あ」
うっすらと見えた月に見惚れて立ち止まった。するとすぐ隣に並ぶ肩になんだか落ちつく。
「あー！」
「うわ、なに？」
空を見上げながらパチッと瞬きをしたら視界が変わってつい叫んでしまった。
「コンタクト落とした」
「はあ？」
せっかく綺麗な月を見ていたのに、悪すぎる裸眼じゃボケてしまったじゃないか。
「もう、どこに落としたの？」
優しい拳くんはしゃがんで私のコンタクトを探してくれている。けれど私はそのまま突っ立ったまま、もう一度空を見上げた。
よく見える左目とぼやけて見える右目。視力検査のように片目ずつ手で隠して比較して見る。
「……これはこれで綺麗」
「え？ちょっと、暗くてどこにあるか全く分からないんだけど」
ぼやけて見えるほうがなんだか良い。私はむしろこっちのほうが好きかも。そう思ったらコンタクトなんて要らないと思った。
「あー！ちょ、A？何してんの？！」
慌てふためく拳くんを無視してもう片方のコンタクトも外してポイッと投げ捨てた。
「へへ。」
へらりと笑ってみせるが拳くんの顔は視力が悪すぎて鮮明には見えない。多分ちょっとキレてそう。
「ワンデーだからもう捨てても大丈夫」
「だとしてもポイ捨てしちゃダメでしょ」
それはごもっともだ。すぐに拾ってゴミ箱にきちんと捨てといた。
「これでしょ？落ちたやつ」
「あ、多分そう」
どうやら落としてしまった右目のコンタクトを拳くんが見つけてくれたようだ。
「ほら帰るよ」
「はーい」
それをゴミ箱に捨てながら拳くんは呟いた。素面じゃなければ私はもっと大人しい。でも今日ぐらい振り回したいじゃない、余裕そうな彼をさ。
「ね、ぼやけて見える月ってなんだか良くない？」
歩きながら拳くんに告げると、彼は同じように空を見上げた。
「…あー、まぁ確かに」
カチャリと音を立てて眼鏡を外す拳くん。今日の拳くんは度入りの眼鏡をしていたらしい。
「ふふ、でしょ？」
お互い裸眼の状態で目が合った。今はすぐ近くにいるからきちんと表情がわかる。
「もう分かったから、酔っ払いの戯言は勘弁してよ」
「えー。」
───じゃあ月が綺麗ですねって今の私が言っても信じてくれないのかな。好きなんだけどな、拳くんのこと。
インクの切れたボールペン-sgi→←思いのまま、転がる。-ini
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緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ！ (2020年12月30日 22時) (
レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね！知らなかったです。教えて下さりありがとうございます！ (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します！みかんの白い筋は､アルベドって言うんですよ！ラテン語で“白さ”という意味です！このコメントはスルーしていただいても構いません｡お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃるちゃる | 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月9日 17時
