ページ ページ37
「じゃあ、最後の休憩行ってきまーす」
行ってらっしゃい、と見送られたバイト最終日の昼休憩、習慣と化したコンビニに行くといつも見かけるオレンジくんは見当たらなかった。
残念、もうこのコンビニに来るのも今日で最後なのになあ。まぁだからと言って話しかけるなんてことはするつもりもなかったが。
じゃあせめて、と思った私はりんごジュースを手に取った後隣に並んでいたオレンジジュースにも手を伸ばした。
ちょうどその時通りかかった人も次々に買っていって綺麗に陳列棚は空となった。
「……え、もうないの?」
今日は持ってくるのを忘れてしまったため3円払ったレジ袋に入れてもらっていた時、入口から1番近いレジで聞こえた声。
隣を見るとオレンジくんが店員さんと話していた。彼の声を聞いたの初めてかも。
「そんなぁ…」
「来るの遅いんですよ。今日は諦めてください」
女性店員さんとどうやら顔見知りみたいでフランクに会話が行われていた。
そうか、彼はもう既に来てしまったと思っていたけれどその逆だったのか。そして恐らく聞こえた話から予想するにいつも買っているオレンジジュースが売り切れていることを言っているとみた。
お釣りと同時に手渡された自分のレジ袋を見つめる。この中には彼がいつも飲んでいるから買ったオレンジジュースが入っている。
…どうしよう。このまま見て見ぬふりをして帰るか、
「…あの、これ」
「え?」
私はいつも手に持つ赤色のパックを袋から取り出して話しかけた。
「いつも買ってましたよね、見かけてました。その…私、同じ種類のりんごジュースが好きで。
今日はオレンジジュースも買ってみようかなぁなんて思って手に取ったんですけど、売り切れたなら…好きな人が飲むべきだと思います、!」
しどろもどろになりながら、オタク特有の早口になりながら、それらしい言葉を並べてレジ袋を渡す。
「そ、それじゃ!」
もう無理だと悟った私は彼が何か告げる前に逃げた。どうせ今日で会うのも最後だからと当たって砕けた。見事に粉砕な気がする。
あーあ。職場が変わっても時々買いに来ようかなって思ってたんだけどな。まぁいいか。そういう日もあるよね。
一晩寝てしまえば昨日の悩みなんて忘れてしまうポジティブ人間の私はこの時のことを深く考え込むことはなく毎日を過ごしていた。むしろ、忘れていたのだ。
「どうぞ」
ある日突然、オレンジくんからりんごジュースを渡される日が来るなんて思ってもいなかった。
201人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ! (2020年12月30日 22時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね!知らなかったです。教えて下さりありがとうございます! (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します!みかんの白い筋は、アルベドって言うんですよ!ラテン語で“白さ”という意味です!このコメントはスルーしていただいても構いません。お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月9日 17時