塩っぱさに乗る-fkr ページ33
「じゃあね」
ニッコリと優しそうに笑って私の前から去っていく。ねぇ、待ってよ……！
「っ…、」
鳴り響くアラームによって起こされる。怠くて重い体を動かして鏡の前に立った自分はいつもと何も変わっていなかった。
…これでも昨日、彼氏に振られて泣いたはずなのに。泣いたら目が腫れるとか私には通用しないらしい。こういう時だけぱっちり二重でコンディションが良い。
きっと、いや誰にも泣いたことなんて気づかれないだろうな。
慣れた手つきでメイクをして外へ出た。
「いらっしゃいませー」
私はコンビニでバイトをしている。分かりやすい変化にも気づかないような店長は勿論、先輩たちにも何も突っ込まれることなく順調に仕事をこなしている。
今日はいっそのこと仕事で気を紛らわせようじゃないか。
がさがさ、と音がして背筋を伸ばす。私の前に置かれたのはポテトチップス。ということは、
「こんにちは、Aさん」
「福良さん。こんにちは」
オフィスが近くにあるらしく、皆さんよく買いに来てくれる。その中でもよく話すのが福良さん。道に迷った福良さんに声をかけられてから気さくに会話をする仲になった。
今日も福良さんはポテチを買うなんて相変わらずだなぁ、と思いながらレジ打ちを行う。
「お箸入れておきますね」
「あぁ、ありがとう」
私が声をかけると少し反応が悪い福良さん。疲れてるのかな。毎日忙しいしそりゃそうか。私なんかと違うよな。
「どうぞ」
「……」
レシートと共にレジ袋を渡すが受け取ってもらえない。大きな瞳で見つめられてどうしたらいいのか分からない。
「あの、何か？」
何も言わず突き刺さる視線に耐えきれず聞くと我に返ったようにううん、と首を横に振った。
「無理して笑わなくてもいいよ」
「え…？」
まるで私の事情を分かっているかのような言い方だった。でも多分、それはたまたまだろう。
「そんなに笑顔ぎこちないですか？」
きっとダルいというのが表情に出てしまっていただけだろう。軽く自虐的に返すと慌てたように否定された。
「別に俺とかの前では営業スマイルしなくても怒られないよって言いたくて」
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です」
福良さんは優しい。だけど私はそこまで器用じゃないから無理して笑ってないとダメなんだ、特に今日から暫くは。
そっか、と言ってレジ袋を受け取ってくれた。あとは見送るだけ。
「じゃあね」
そう言って去っていく姿が重なってしまって、
「やだ、待って…！」
気づいたら福良さんの腕を掴んでしまっていた。
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緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ！ (2020年12月30日 22時) (
レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね！知らなかったです。教えて下さりありがとうございます！ (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します！みかんの白い筋は､アルベドって言うんですよ！ラテン語で“白さ”という意味です！このコメントはスルーしていただいても構いません｡お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃるちゃる | 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月9日 17時
