鎖解き施す wtnb ページ11
※暗いです。なんでも許せる方のみ。
『はぁ…はぁ…』
「A………っ」
私たち二人の乱れた息遣いだけがこの空間に鳴り響く。クーラーが効いているはずなのに、汗が止まらない。この汗の正体は、冷や汗だ。そのことを私たちは嫌という程理解している。
手の震えは未だに治まらず、嫌な臭いが身体にまとわりつく。例えるならば、鉄。
「行くぞ」
『ま、待って。この後、どうするの……っ？』
焦っている私とは対照的に、航平は至って冷静だった。私を見つめる彼の目すらも、冷たかった。だけどそうさせたのは、無論私。
涙がこぼれそうになって、ぎゅっと目をつぶった。
「どうするって、逃げるに決まってんじゃん」
『え…』
この状況で逃げたりしたら、間違いなく追われてしまう。でも、逃げなくたって結末は見えている。
「ほら、行くぞA」
『う、うん…っ』
航平に手を取られて走る。傍から見たらカップルに見えるのだろうか。決して私たちはそんな一言で言えるような関係ではない。現に、私たちは道を踏み外してしまっているのだから。もう、戻れない────。
“今日未明、A県某所の自宅にて何者かに刃物のようなもので刺されて死亡している男性が見つかりました。”
『航平、ごめんね…』
「なに謝ってんだよ。Aは悪くない」
あれから一晩を航平の家で過ごした。数分前にセットした湯が湧き上がり、いつものように笑いながら航平はカップにお湯を注いでいた。
「あのままじゃAが死んでたかもしれないんだから」
『でも…っ』
「大丈夫」
とりあえず飲みな？Aココア好きだろ、と言って私の前に置いてくれた。泣きそうだった私は航平の作ってくれたココアのおかげで引っ込んだ。でも心の中の渦は消えない。
『航平を…巻き込みたくなかった』
せっかく私の好きな物を覚えてくれてたのに。せっかく私のために優しくしてくれてるのに。こんな形で味わいたくなかった。
「まぁ、ただの友達なのに普通ここまでする奴いないよな」
『っ……ホント、航平は優しすぎるよ、』
航平の口から何気なく出た言葉に柄にもなく胸が抉られる私。私だけが航平のことを好きなのは分かっていたこと。それでも尚、優しい彼に助けを求めたんだから、全部全部、私が悪い。自業自得。
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ちゃるちゃる(プロフ) - わたぐもさん» わわ！ありがとうございます！！ギャップが大好きでして、そう言っていただけてとても嬉しいです！！ (2020年9月10日 17時) (
レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - 新作のこうちゃんのお話どストライクすぎました…… (2020年9月10日 2時) (レス) id: 22632e30cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃるちゃる | 作成日時：2020年8月3日 16時
