Short Story × Songs 【QK】

また　fkr ページ9

「どうしたの？」

そう言われてハッとする。

『ごめんなさい、ちょっとボーっとしてました』

嘘はついていない。でも、ちょっと気が引ける。それでも先輩は笑って、そっかと言ってくれた。


先輩、福良さんは私の好きな人である。もちろんただの片思いなのだけれど。

優しい先輩とこうやって会えるだけで嬉しい。

本当は、また会いたい。

でもそんなワガママ言えるはずがない。


先輩はYoutuberをやっていて、出演もするし企画も考えるし編集だってしている忙しい人なのだ。
負担だけはかけたくない。だけど…


偶々バッタリ会って日が暮れるまで一緒にいただけで、
特段予定を合わせて会っていたわけではない。

まだ暗くないのに、送ると言った先輩に、好きさが溢れてしまった。

夕暮れの緩い坂道を二人で歩いている。
木漏れ日がなぜか切なく感じた。



また会ってください。心の中では呟くことができる。そりゃそうか。笑

先輩の背中を斜め後ろからついていく。

一緒にカフェでスイーツを食べたり、野良猫を見つけて癒されたり、
思い出はできたけれど伝えきれないことばかり。

もう少し近くで話せたら幸せだったのに…

なんて、今一緒に帰れているだけ幸せなのに、さらに貪欲になっている自分がいて嫌だ。


今こそ話すチャンスなんだろうけど、元々話すのが得意でない私には難しかった。
また、先輩もそこまでたくさん話す人ではなくて。

そんな二人じゃあ無言が続くのも想像できるだろう。


寂しさの風が木々を揺らし、蜩が名残惜しそうに鳴いていた。

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