«続き» ページ3
「行ってきます…」
私は荷物を持って家を出る。
結局昨日のことは引きずったままになってしまった。
昨日より痛みが強まるばかりだ
私は首を激しく横に振る
……もう考えるのはやめよう
そうして、キャリーケースを転がして駅へ向かう
駅に着いて切符を買い、改札口へ向かいホームで電車を待つ
「○○…」
「…………嘘」
見覚えのある声の方に顔を向ける
「きんとき……なんで…」
「友達に聞いたんだ。…全部。」
どこか優しく、どこか哀しみを含んで微笑むきんときの姿があった
「それなら分かるでしょ？私行かなきゃだから。」
顔を見ちゃダメだ……
見たら決意が揺らいでしまう。
＿＿パシッ
左手を掴まれる。
それは包まれるように優しくでも
簡単には離せないほど強く
「……行かないでとは言わないよ。○○が決めたことなら応援したい…でも……」
「お願い…離して……」
私は彼の言葉を遮るように吐き捨てる
これ以上…これ以上一緒にいたら
心の底では嬉しかった。またきんときに会えたこと。
本当に嬉しかった。
でもダメだ…こんなこと伝えられない…
私はふと顔を上げた…
私を止める彼の顔が見えた瞬間
堰き止めてた気持ちが一気に私の背中を押した
『本当はまだ繋がっていたい』
私の素直な気持ち。本当の気持ち。
＿まもなく東京行き電車が参ります
アナウンスが響く
……本当にこのままでいいの？
もう一度自分に問いかける
私は……私はっ……！
「きんとき…私っ！」
その時、頬に暖かい水滴が落ちる
それと同時に塞がる唇
あぁ…これで良かったんだ。
初めてそう思えた気がした
今だけは泣いていいよね
もう言葉は要らない
見計らったように発車のベルが鳴った
電車に乗り込む私とホームで待つ君
扉が閉じた瞬間きんときが口を動かしているのに気づく
〈 …待ってるから 〉
その言葉を胸に私は電車に揺られる
来年の今ごろにはどんな私がいて
どんな君がいるのかな
END
続く
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作者名：ちゃま | 作成日時：2022年4月14日 0時
