白百合園に咲く彼岸花 (ページ3)

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そうして、学校ではずっと伊野尾とつるむようになった。
体育での準備体操も伊野尾とペアだし
移動教室でも一緒だ。

そのせいでイカれた野郎に「伊野尾とはどういう関係なんだ」
と詰め寄られるのも日常茶飯事だ。
そのたびに俺は「友達だよ。余計なお世話だろうけど
アイツはそんな可愛いもんじゃないぞ」と、
助言し、「お前はお姫様の一番近くにいるから分からないんだ！
この贅沢者！」と泣かれるまでがお約束になった。

「よぉ、薮。遅せぇよ」と悪態を着く伊野尾を
蹴っ飛ばすとカラカラと笑って
「いやぁ、いつもご苦労なもんで」と
まるでお笑いコントを見た後みたいに
おかしそうに言うから、俺はまたコイツが
[お姫様]の名をものにしているのが不思議で堪らなくなる。

「なぁ伊野尾、たまには放課後遊びに行かね？」

「あー、ごめん無理。俺、放課後は用事あんだよ」

「なんだよ、この前もそれだったじゃん」

「家にいなきゃいけないんだよ」

「じゃあ、お前の家でいいよ。
俺別に騒いだりとかしないし」

「え〜、お前そんなに俺といたいのかよ〜」

「ちげぇよ、暇なんだよ」

また伊野尾はカラカラと笑う。

「別に家に来るのはいいけど、俺施設育ちだから
お前ん家みたいな感じじゃないよ」

「えっ、そうなんだ」

初耳だ。
コイツは俺にだけ心を開いているもんだと思っていたが
それは酷い勘違いだったようだ。

俺はコイツの家族のことも、宝物だって知らない。
俺がベラベラと喋るのをコイツはいつも
ヘラヘラと聞いていただけだったのだ。

だけど、そこでヘタレ込む俺ではない。
だったらこれから知っていけばいい。
もっと沢山伊野尾の話を聞けばいい。
ただそれだけだ。

「上等じゃんか、お前ん家連れてけよ」

「なんでお前ってそう偉そうなわけ」

そう言って伊野尾はいつもより弾んだ声で
俺をバカにした。