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蜜が7滴 ページ8

『宇髄君、久しぶりだね。元気そうで安心したよ』




手袋を付け替え、香を焚きながらAはそう言った。



仲のいい隊士たちには一時帰還の文を飛ばした。すると、宇髄はすぐさま整体の申込みの文を飛ばしてきた。



宇髄はいつものように寝そべってAに背中を向ける。
そっと体重をかけると、宇髄は少しばかり顔をしかめた。




「また軽くなってねぇか?」


『そう?気のせいじゃないかな』


「いんや、そんなわけ無い、断言できるね。前より随分と軽くなってやがる」


『変化に敏感だなぁ』




これ以上は触れさせまい、と力を強く込める。
余程痛かったのか、無抵抗ながらもうめき声をあげた。



長いこと整体を行い、眠りに落ちてしまった宇髄の体を揺する。
微睡みの中にいる彼は、小さく声を上げながら伸びをした。




『おはよう。少し動いて見せてよ』


「ぉ〜……」




掠れた声でのんびりと返事をする。
いつもはシャキッとしているのに、珍しくゆったりした態度につい笑ってしまう。



まぁそれも、宇髄が体を動かしてすぐ変わったわけだが。




「うぉッ、すげぇ軽くなってんな」


『それはよかった。というか、僕が任務に行く前柔軟を教えたろう?』


「そういやそんなのもあったっけか」


『……ほぐすのも一苦労だったのだけれど?』




苦笑いしながらAは茶を淹れる。
所謂ここいらで最も高級な茶葉。Aは任務に行く前に必ず飲むようにしていた。



気持ちの切り替えと、最後の晩餐の意を込めて。



最悪ここに帰ってこられない可能性だってある。
現に、すごく頼りになった煉獄は先日の上弦との戦いで命を落としたとか。
鴉伝いでそれを聞き、確認したところそれは本当だった。




『……流石に、煉獄君の仇は取れないな』


「地味に弱気になってんなよ。」


『弱気じゃない、事実だ。僕の相手は上弦の参じゃない。』


「……まだ続けてんのか」


『それはもう。あと少しなんだ、もう少し。』




宇髄は薬品棚をぼんやりと見つめる。
いつもこの部屋は診察室とは違う、どこか独特な匂いが漂っていた。
香を焚いても尚、僅かにそれが鼻をくすぐる。




「んじゃ、死ぬわけにはいかねぇよな」


『はは、宇髄君がいるのなら安心だ』


「おうよ、ド派手に抹殺してやる!」




頼りになる宇髄にそっと目を細める。
さて、そろそろ任務の時間。準備をせねば。

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作者名: | 作成日時:2020年12月22日 19時

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